2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本語副詞における意味・機能の史的変遷の記述的研究
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18820004
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
小川 真紀子 (田和 真紀子) 宇都宮大学, 教育学部, 講師 (30431696)
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Keywords | 副詞 / 意味 / 機能 / 変化 / 史的変遷 / 「だんだん」 / 「おほよそ」 / 「およそ」 |
Research Abstract |
日本語学会2006年度秋季大会にて、「副詞における意味変化と機能変化の相関-「だんだん」を例として-」という論題で、口頭発表を行った。(『日本語学会2006年度秋季大会予稿集』p.75-P.82に予稿収録) 日本語学会での口頭発表では、現代日本語で、漸次的な変化を表す副詞・「だんだん」を、過去にさかのぼって古典作品を中心とする文献から用例収集および調査を行った結果を報告した。 その結果、「だんだん」は、はじめ現代語の「バラバラ」のような一片一片の集合している状態を表す語であった事がわかった。この「バラバラ」の意味が秩序のある集合体を表すように変化し、やがて<累積>した様子を表すようになった。 この<累積>の意味から、感謝表現・謝罪表現においてくり返しによる強調を表す用法と、時間的な積み重ねを表す用法とが生じ、後者が現代共通語の用法につながったものと考えられる。この「だんだん」の意味・機能の変化のプロセスは、現代語において時間的な変化を表す副詞の成立と意味・機能について考察する上でも参考になるものと思われる。 また、本年度は現代語の「おおよそ」・「およそ」の史的変遷を、初出時の表記「おほよそ」「およそ」から書き起こした論文・「「おほよそ」「およそ」の意味・機能の史的変遷」を『外国文学』56号(宇都宮大学外国文学研究会発行)に発表した。 「おほよそ」「およそ」のような「だいたいの数量」(概数量)を表す語は、構文内において連体修飾や名詞的な用法として数量詞的な振る舞いをするが、一方、文頭で一文を概括する副詞的用法や文末の推量表現と共起して確信の度合いを表す陳述副詞的な用法を持つものもある。 このような概数量を表す副詞のグループにおいて、概数量を表す語彙的な意味の面と、そこから派生したと考えられる文法的な機能の面が、史的変遷においてどのように関連して成立しているのか明らかにし、意味・機能の変化における規則性を見いだすために、個別に概数量を表す副詞の史的変遷を記述する必要がある。
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