2006 Fiscal Year Annual Research Report
地方圏の公共土木事業をめぐる地域システムの形成と変動に関する研究
Project/Area Number |
18820014
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
武者 忠彦 信州大学, 経済学部, 講師 (70432177)
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Keywords | 公共政策 / 公共事業 / 地方圏 / 土木業 / 地域システム |
Research Abstract |
平成18年度は,長野県内の市町村を事例として,地方圏における公共土木事業システムを実態的に把握することを試みた.具体的には,以下の3点の作業を行った. 1.事業を発注する各行政機関(各市町村や県の出先機関)が所有する指名競争入札データをもとに,当該地域において実際にどの事業にどの業者が指名され,最終的にどの業者が受注したのかを分析した.その結果,1)自然環境の違いを背景にした業者間の棲み分けがなされている(受注圏の形成),2)事業の規模に応じて業者間の棲み分けがなされている(各市町村単位の受注ピラミッドの形成),3)近年はそうした棲み分けのルールが徐々に崩れつつある,などの点が明らかとなった. 2.公共土木事業に関与するアクターとして,行政(発注担当部局の担当者など),政治家(首長や地方議員),土木業者の3者に着目し,長野県南佐久郡,旧南安曇郡などを中心にインタビュー調査を実施した.その結果,行政による地元業者の優遇への見返りとしての工事の品質維持など,それぞれのアクターは相互依存的な関係によって結びついていることが明らかになった.なお,以上の内容は平成18年度長野県地理学会にて発表した. 3.作業結果についての考察を深めるため,農山村をフィールドとする研究者らによる研究会に出席し,本研究の事例が,複雑系科学や組織論の視点からどのように理解されるのか,理論的検討を行った.その結果,地域システムとしての公共土木事業は,自然・社会・技術など,さまざまな環境制約の下で,それぞれのアクターが適応的変化や相互作用などを行いながら,全体として「進化」するシステムとして位置付けられる可能性が示唆された.
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