2006 Fiscal Year Annual Research Report
持続時間及びピッチ変動が長音の知覚に与える影響の方言差
Project/Area Number |
18820027
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
嵐 洋子 杏林大学, 外国語学部, 講師 (90407065)
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Keywords | 長音 / ピッチ / カテゴリー的知覚 / 能太市方言 / 無型アクセント |
Research Abstract |
本研究は、多くの日本語学習者にとって知覚が難しいとされる特殊モーラのうち長音に焦点をあて、第二言語としての日本語教育へ応用することを意図しながら、まずは日本語母語話者が長音をどのように知覚しているのかを明らかにすることを目的とする。特に持続時間と、ピッチ変動の有無が長音の知覚にどのような影響を与えているのかについて、東京方言話者及び熊本市方言話者(無型アクセント)に対して調査を行い、アクセントの有無によって長音の知覚に違いがあるのかどうかを明らかにし、長音の知覚の多様性について考察する。 H18年度に行った調査結果は以下の通りである。まず、刺激作成における予備実験として東京方言話者、大阪方言話者それぞれに知覚実験を行った。まず、スタジオで横浜市方言話者により録音された刺激[kau「ka de【reverse left half-bracket】s]「カーカデス」のピッチ上昇の位置を約30msずつ冒頭の[k]に近づけ、7段階に変化させた。これにより、「カーカ」はLLHからLHHに変化していく。刺激0(元の音声)〜7まで、8個の刺激が作成された。被験者はランダムに提出された刺激を3セット聞き、「カカデス」か「カーカデス」のどちらかを選択した。その結果、どちらの方言話者も、ピッチの変化に関わらず、元の音声として聞いていることが分かり、ピッチを変化させることにより長音の知覚に影響が出るとした先行研究(Nagano-Madsen1990)とは異なる結果が示された。この結果により、刺激が有意味語か無意味語か、また刺激の合成音作成における条件(音質、持続時間)などにより結果が異なってくることが示唆され、実験方法を変更する必要性が示唆された。 そこで、本実験では、「カードデス」[ka【reverse left half-bracket】udodes]という有意味語を刺激とし、まず、最初の[a]の部分の持続時間を100%から10%まで短縮した。また、「カードデス」[kau【reverse left half-bracket】dodes]という長母音部分にピッチ変動が来ない刺激を作成し、同じく[a]の部分を短縮した。刺激はコンピューター画面(Internet Explore)を通してランダムな順序で5セット提出され、被験者はヘッドフォンを通して聞く。被験者はまず音声ボタンをクリックし,その後「カドデス」か「カードデス」どちらかを選択しクリックする。現在、熊本市方言話者に対する調査を終え、東京方言話者に対して実験を実施しているところである。現在までのところ、熊本市方言話者の方がややピッチの影響が少ない傾向が示されているが、ピッチの影響には個人差も示唆されている。引き続き実験を行うとともに、個人差とアクセントの生成・知覚との関係などを探る予定である。*引用文献;Nagano-Madsen, Y. (1990)‘Perception of mora in the three dialects of Japanese'. ICSLP 90 Proceedings 1:25-28.
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