2006 Fiscal Year Annual Research Report
現代イスラーム世界における聖典クルアーン(コーラン)解釈者-その世俗化・大衆化-
Project/Area Number |
18820030
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
大川 玲子 明治学院大学, 国際学部, 専任講師 (50434189)
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Keywords | イスラム / イスラーム / コーラン / クルアーン / 聖典 / 解釈 / 現代 / 知識人 |
Research Abstract |
本年度は当初の予定通り、現代のクルアーン解釈事情に関連する資料の収集と整理に取り組みつつ、その精読と分析を開始した。資料収集は主にエジプト(カイロ)に出張して行い、現地の図書館や書店において国内では入手が困難な資料を得ることができた。例えば現在の国際事情を反映し、クルアーンとアメリカを結びつけて現状を分析する書籍などが刊行されている。 また同時に、イスラーム系のウェブサイト上で行われているファトワー(法学裁定)問答の資料に関する論考「イスラーム教徒の聖典観一現代の若者たちにとっての『クルアーン(コ-ラン)』」(『国際学研究』31:33-54)を発表した。ここでは、ファトワー資料を用いて、現代の若い世代のムスリム(イスラーム教徒)が日常生活において聖典クルアーンをどのように認識しているのかという「聖典観」の一端を解明することを日指した。インターネットは地域を越えるという特性を持っているため、特に欧米に在住する若い世代の移民系ムスリムの持つ聖典観を明らかにすることができた。彼/彼女たちは異なる文化的背景を持つ国で生活しているため、クルアーンとの理想的な関わりを持つことを願う一方で、実際には言語(アラビア語)知識の乏しさや情報の少なさ、生活の多忙さから関わり方が不十分なものであると実感しており、この間のギャップに悩んでいるという状況にある。これは異文化社会で暮らすマイノリティーであるがゆえの独自の聖典観であろう。この論考によって現代ムスリムがクルアーンに何を求めているのかの一側面を知ることができ、今後の研究を進める上での貴重な土台を提供することができたと考えている。
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Research Products
(1 results)