2006 Fiscal Year Annual Research Report
インド、グジャラート州におけるヒジュラの共同体とその「模倣」実践に関する調査研究
Project/Area Number |
18820036
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
國弘 暁子 神奈川大学, 21世紀COEプログラム, 研究員(PD) (20434392)
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Keywords | 共同体 / 模倣 / 親族 / ジェンダー |
Research Abstract |
インドのヒジュラは、性とジェンダーの観点から多様な意味付与が重ねられ、ひとつの標章として世界中に流通する。本研究は、そのような「汎ヒジュラ」とは必ずしも同一ではない、ヒジュラとして生きる個々人の実践に焦点を当て、インド、グジャラート州のローカルな一地域において形成される、ヒジュラの共同体のあり方について考察することを目的とする。 平成18年度は、お茶の水女子大学大学院・学位申請論文で提示した、ヒジュラの存立構造に関する考察をさらに発展させるために、死と宗教の視点から、ヒジュラの共同体形成に関する分析を行った。ジャン=リュック・ナンシーが、「共同体は他人の死のうちに開示される」と論じるように(『無為の共同体』ナンシー、ジャン=リュック、以文社2001年)、ヒジュラの共同体は、ヒジュラ個人の葬送儀礼やその他の死にまつわる宗教行事において出現する。ヒジュラは、それぞれの地域ごとにグループを構成して活動するが、ヒジュラ個人の死を契機として、グジャラート全土のヒジュラが死者の家に招集される。そこにおいて、ヒジュラが一旦放棄したはずの世俗的親族間の役割関係が導入され、ヒジュラとして共に在ることを経験する場(=共同体)が形成される。本研究では、ヒジュラの共同体に導入される親族間の役割関係を「模倣」と称し、全くの他者との問に帰属という構造の壁を越えた横断線を創発させる、ブリコラージュとしての意義をもつ実践として捉えた。このようなヒジュラの「模倣」実践を実証的に論じるためのデータを補足するために、2007年3月15日から3月31日まで、グジャラート州でフィールドワークを実施した。現地では、俗世界の人々の間で行われる死の儀礼に関する聞き取り調査を行い、さらに、ヒジュラの先代を祀る「故郷」の村や、ヒジュラに関する伝承に登場する村々を実際に訪れ、その伝承に関するデータの収集を行った。
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