2006 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおける胎児利用要件から見た胎児の道徳的地位についての研究
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18820039
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Research Institution | Gihu University of Medical Science |
Principal Investigator |
加藤 太喜子 Gihu University of Medical Science, 保健科学部, 講師 (10434523)
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Keywords | 胎児 / 良心的拒否 / 道徳的地位 / 生命倫理学 |
Research Abstract |
イギリス助産師協会の、「意見表明17番,良心的拒否」及び、イギリス産科婦人科学会の「妊娠24週以前の流産による廃棄について」を入手し、資料の読み込みを行った。いずれも日本では未紹介の資料であり、資料価値が高いと判断されるものであるため、これらの資料を訳出の上、日本の病院(現場)における実践のあり方と対比した。また、2007年9月2日から9月7日までのイギリスへの出張時には、これらの資料の内容に関する不明点を確認した。現在は、現地での資料の内容確認と照らし合わせつつ、訳語、訳文の調整を行っているところである。加えて、不明点に関する確認のためにお話を伺う中で得た、イギリスの人工妊娠中絶に関する最近の動向について更に詳しく調べ、胎児組織の利用に関する動向と照らし合わせ、本年度のまとめにつなげようと試みている。 以上に加え昨年度は、胎児利用に関する生命倫理学者たちの分析について調べ、いくつか興味深い知見を得た。例えば2006年の臨床倫理誌に掲載されたPrefferとKentによる論文・「幹細胞研究・幹細胞治療における中絶胎児の利用に対する同意」は、研究用の胚の収集と対比しつつ論じており、中絶胎児の用途については、胚の収集に比して更なる透明性が求められると論じている。またアメリカ生命倫理雑誌の7巻6号(2007年)では、良心的拒否に関する特集を組んでおり、中でもCardによる薬剤師の緊急避妊に関する良心的拒否を扱った論文「良心的拒否と緊急避妊」は、良心的拒否と専門職倫理の葛藤に焦点を当てていた。本研究が射程としている胎児の道徳的地位についての考察において、これらの論文から学ぶところは極めて多く、示唆的であった。 今後は、これらの資料を参照し、かつ、イギリスにおける中絶の最近の話題に着目しながら、胎児組織の利用という問題を通じた胎児の道徳的地位についての考察を更に展開させる予定である。
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