2006 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀フランスにおける教養教育の重要性-修辞学教科書に関する多角的分析
Project/Area Number |
18820040
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
玉田 敦子 中部大学, 中部高等学術研究所, 研究員 (00434580)
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Keywords | 修辞学 / レトリック / 教養教育 / 言語政策 / 趣味 / 『百科全書』 / キケロ / クインティリアヌス |
Research Abstract |
近代国家の成立過程において言語政策とそれに伴う教養教育は重要な役割を果たしてきた。なかでも言語の「正統性」の根拠とされた、文学作品と文学教育は近代国家のアイデンティティ形成において不可欠であった。フランスでは18世紀初頭よりフランス語で行われるようになったコレージュにおける修辞学教育が言語教育と教養教育を担い、言語政策実践の場となる。このフランス語修辞学教育はアリストテレス、キケロ、クインティリアヌスらが発展させた古典修辞学の影響を強く受けつつも、当時の社会を支配した美学的嗜好、教育観などに従い独自の発展を遂げた。本研究の目的は、18世紀フランスの修辞学教科書を古典古代の修辞学書と比較検討することにより、その独自性を浮かび上がらせることである。 本研究は以下の4つの作業行程によって立体的に構築される。(1)古典古代の修辞学書と関連書籍の分析。(2)18世紀修辞学教科書の調査。(3)他の18世紀文学関連資料の分析。(4)『百科全書』等、18世紀の辞書・辞典類の調査。(1)本年度は古典古代の文献の中でも特に修辞学書ジャンルの起源となった文献を中心に調査した。(2)18世紀フランス修辞学教科書に関しては、フランス国立図書館にて調査を行い、関連文献の系統的なデータベースを作成した。このDBに基づいて同図書館が所蔵する教科書の電子データを収集した。(3)ロラン、バトゥなど修辞学教科書の「本流」を形成した作家の文学制作論について調査を行った。(4)修辞学教科書と辞書辞典類、特に『百科全書』との間に見られる間テクスト性を分析・発表した。 今年度は主に古典古代の修辞学書、18世紀の教科書といった一次資料の分析を口頭発表、論文(当該欄参照)に結実させたが、平成19年度は修辞学に関する社会史的考察にも取り組み、教養教育の18世紀フランス社会における位置づけを明確にしていきたい。
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