2007 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀フランスにおける教養教育の重要性-修辞学教科書に関する多角的分析
Project/Area Number |
18820040
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
玉田 敦子 Chubu University, 中部高等学術研究所, 研究員 (00434580)
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Keywords | 修辞学 / 教養教育 / 国際情報交換 / 趣味 / 18世紀 / 啓蒙思想 / 表象 / フランス |
Research Abstract |
17世紀フランスの修辞学は『ポール・ロワヤル文法・論理学』に見られるように、キリスト教神学の影響を強く受けており、「観念」と「記号」が一対一対応することを目指す「表象=再現」を基本としていた。しかるに古典主義的な表象システムにおいて「崇高」は、表現の不可能性、システムの中心に必然的に存在する空白として機能しており、表象システムにおける「魅惑的な裂け目」とみなされていた。 ところが18世紀になると、修辞学はこのシステムから脱却する。この変化には、1674年にボワローがフランス語に翻訳、出版した、古代ギリシアの修辞学者、ロンギノスの『崇高論』が、修辞学の修練と崇高を結びつけたことが大きく影響していた。古典修辞学においては、クインティリアヌスでさえ、優れた言説に対する美的判断力は生まれつきの性質であると論じていたが、『崇高論』の流行より、崇高は一種の技術として修辞学によって涵養されるという考え方が一般的となったのである。以後、修辞学は、キケロなど古典古代の修辞学を参照して、「簡潔な文章のなかで多くの内容を伝える」技術によって生じる「崇高」を理想とするようになった。 この観点から、研究代表者は2007年7月、モンプリエ(フランス)で行われた国際18世紀学会において、『啓蒙の世紀と崇高』を主題としたセッションに参加し、18世紀の修辞学における崇高を主題として研究成果を発表した。また、日本フランス語フランス文学会秋季大会においては、「崇高と多様性(variete)への志向-18世紀における美学・修辞学理論を中心に」という題目にて発表を行い、18世紀フランスにおける「反表象的」修辞学の特色を明らかにした。(この主題に関しては中部大学国際関係学部紀要等に論文を執筆した。)本研究はこのように修辞学における表象の問題に取り組むことにより、上記の成果を結実させるとともに、今後の研究への展望を開いた。
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