2006 Fiscal Year Annual Research Report
五四新文化運動後の中国文学における<自己表現>性の研究
Project/Area Number |
18820048
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
大東 和重 近畿大学, 語学教育部, 講師 (60434859)
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Keywords | 中国現代文学 / 日中比較文学 / 五四新文化運動 / 魯迅 / 郁達夫 / 台湾文学 / 大正文学 / 影響と受容 |
Research Abstract |
本年度は五四新文化運動後の中国文学の研究において、以下のような実績をあげることができた。 (1)研究成果の発表:これまでの一連の五四新文化運動後新文学研究の一部として、11.研究発表に記した論文、「魯迅『吶喊』と近代的作家論の登場-一九二〇年代前半の中国における読書行為と『吶喊』「自序」」を公表することができた。この論文は、新文学の中心人物の一人だった魯迅の『吶喊』が、当時いかに読まれたかを検証することで、五四新文化運動後に勃興した新文学のコンセプトを明らかにするものである。 つづいて、新文学のもう一方の旗手であった郁達夫が、日本の大正文学からいかなる影響を受け、創作を開始したのかを論じた、「郁達夫における志賀直哉の受容-自伝的文学とシンセリティ」を発表することができた。魯迅や郭沫若、郁達夫など、日本留学経験者を多く含む新文学運動では、日本文学からの影響を明らかにせずに、その文学を論じることはできない。今後もこの郁達夫における大正文学受容については、明らかにしていく予定である。 (2)書籍の購入:本年度は、科学研究費補助金を利用して、五四新文化運動後の中国文学を研究する上で必要となる研究書、工具書(参考図書)、資料を購入することができた。また、今後の展開として、日露戦後の日本文学、五四新文化運動後の中国文学と併行して研究を進める、日本統治期の台湾文学についての研究書も購入した。次の研究に大いに生かしたい。 (3)資料の調査・収集:科学研究費補助金を利用して、二月末に中国の各地の図書館で、資料の調査・収集を行った。主に上海図書館、廈門大学図書館、広州の中山大学図書館で行った資料調査では、五四時期の書籍やそれらを対象とする研究書・論文を収集することができた。また同時に、魯迅が足跡を残した上海、廈門、広州において、各地の魯迅記念館や魯迅故居を訪れ、地理的な調査をすることもできた。
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