2006 Fiscal Year Annual Research Report
考古植物学的手法による中東レヴァント地域周辺における農耕起源の解明
Project/Area Number |
18820056
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
丹野 研一 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト上級研究員 (10419864)
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Keywords | 考古植物 / 農耕起源 / 栽培化 / 考古学 / 遺伝学 |
Research Abstract |
西アジアは世界最古の農耕がはじまった地域として知られるが、その中でもとくにレヴァント地方はその起源地であると考えられている。本研究はレヴァントで農耕がはじまったとされる約1万年前およびその前後の時代の遺跡を対象にして、出土植物の同定・調査を行うものである。農作物の栽培化に関する知見を得るとともに、当時の生業についての具体像を描くことを目的としている。研究の進捗状況および得られた新知見などについて以下に記す。 レヴァント地方の5つの遺跡、すなわちデデリエ遺跡(シリア・ナトゥーフ時代)、テル・エル・ケルク遺跡(シリア・土器新石器時代)、セクル・アヘイマル遺跡(シリア・先土器新石器時代)、サラット・ジャーミー・ヤヌ遺跡(トルコ・土器新石器時代)、ワジ・アブ・トレイハ遺跡(ヨルダン・先土器新石器時代)で発掘調査に参加し、フローテーション法(水洗選別法)によって植物遺存体を採集した。とくにデデリエ遺跡とサラット遺跡で、大量の炭化物を回収することができた。 得られた植物を顕微鏡下で観察した。大まかな傾向としては、農耕がはじまる以前の遺跡(デデリエ)からはピスタチオ・アーモンドなどが多量に見られ、木本植物への依存がきわめて高いことが浮き彫りとなった。この傾向はこれまで報告されている遺跡でも若干の傾向は見られているものの、注目はされておらず、本研究のような明瞭な結果は新知見と言ってよいと思われる。その他の農耕後の遺跡では、ムギ・マメなどが時代とともに増加しており、この点は通説どおりであった。本研究ではムギの栽培化の指標となる「穂軸」という遺物について、世界最大規模の判別調査を行っているが、これについて次年度も継続して調査を行い、成果をまとめる予定である。
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