Research Abstract |
本研究の目的は,第1に,身体の動きが極めて微弱微細な超重症児の身体の動きの発生および拡大を促がす係わり方を明らかにすることであり,それをふまえた上で,第2に,見出された身体の動きの意味について検討することである. 本年度は,これまで筆者が実行してきた,超重症児1事例への3年間の教育的対応の経過を分析した.まず,教育的対応のなかで見出された身体の動きを確定し,各々発現した状況と動きの型とに分類した.また,自発的な身体の動きの発現数が多い上位5セッションを取り上げ,1セッション内における発現条件の分析を行なった.その結果,3年間の経過にしたがって身体の動きが増加する傾向があり,なかでも,働きかけられているときと比して働きかけられていないときに発現する動きが増加していること,働きかけられているときと働きかけられていないときとで発現する動きの型が異なる傾向があること,1セッションにおける対応の展開のなかで身体の動きの型および発現頻度が変化する傾向があること,が明らかとなった.結果より,超重症児に見出された身体の動きを「反射」,「不随意運動」としてのみとらえることには慎重であらねばならないこと,身体の動きの型,頻度の変化には,マッサージや他動的運動などの働きかけや振動刺激などがフィードバックされる状況設定が大きな条件になっていると思われ,超重症児も開放系として環境と秩序ある相互交渉を行なっていること,等が考察された. また,本年度は,一方で新たな研究フィールドの開拓に努めた,その結果,重症心身障害児施設を定期的に訪問し,教育的対応の場を持つことができるようになった.現在,身体の動きが極めて微弱微細な数名の重症心身障害児への教育的対応を実行しており,今後,関係者との調整の後,可能であれば本研究の対象児に含め,上述の課題について検討していきたいと考えている.
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