2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18830016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安藤 馨 東京大学, 大学院法学政治学研究科, 助手 (20431885)
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Keywords | 法概念論 / 法命令説 / 功利主義 / 統治 / 法実証主義 |
Research Abstract |
本年度の研究に於いては、主として分析法学的法実証主義の原点としてのジェレミー・ベンタムの法概念論(主権者命令説)について研究を行なった。このために、思想史的アプローチとしてはベンタムの関連する著作の検討を初め、法概念論上の主著『法一般論Of Laws in General』の精確な読解と把握を対象として多くの作業を行った。この過程で副産物として『法一般論』の日本語訳が作成され、これを基に東京大学でのベンタム研究会に於いて他の若手ベンタム研究者との共同的検討が行われた。思想史分野に於いてもベンタムの法概念論の根本的性格づけ(功利主義的関心に基づいて望ましい法のモデルを提示するための基礎たる記述モデルとしての法命令説)についてすら包括的な検討が未だ行われておらず、より一層の研究が必要とされていることが確認された。このため、ベンタムの法概念論の根底にある規範的関心としての功利主義についても主として現代的観点から検討を行い、古典功利主義が最初期のリベラリズムと解されるべきこと、それが現代に於いてなおリベラリズムとして優れた思想的地位にあることを確認した(『国家学会雑誌』論文)。また、その具体的敷衍として古典功利主義の持つ人格論や価値論などの諸特徴が、現代に於いてもなおラディカルな改革的ポテンシャルを有していることを論じた(『創文』誌上に発表)。 哲学的アプローチとしては、義務論理学及び存在論的観点からの検討が行われた。この結果として、ベンタムの法概念論を適切に分析するために、自由の測量問題に応えるべきこと、そのために行為の存在論がベンタム本人のそれよりも精確に定式化されるべきこと、現在の義務論理学研究にそのための資源を求めうること、また事態当為、集合当為、個人当為といった一連の義務的諸概念の分析が法命令説の理解に不可欠であること、が確認された。
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