2006 Fiscal Year Annual Research Report
「移住労働の女性化」の再生産メカニズムの諸相〜フィリピンを事例として
Project/Area Number |
18830023
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小ヶ谷 千穂 横浜国立大学, 教育人間科学部, 助教授 (00401688)
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Keywords | 移住労働の女性化 / 社会学 / 再生産 / フィリピン / 高齢者介護 / 国内移動 / 家事労働 |
Research Abstract |
研究初年度の今年は、フィリピン国内における再生産労働力の供給を(1)家事労働者の国内移動、及び(2)高齢者介護の状況から明らかにすることを試みた。 (1)家事労働者の国内移動からみるフィリピンの再生産労働力供給について: フィリピン国内における家事労働者の国内移動は、きわめて社会的に可視化されにくい事象である。現地調査においては、こうした社会的に可視化されにくい家事労働者の国内移動が、実態としては人身取引の様相を呈していることも、関係団体からの聞き取りによって明らかになった。フィリピン人女性の家事労働者としての海外就労と国内家事労働者との相互関係については、2年目の研究から明らかにする予定であるが、少なくとも構造的には女性の海外就労を可能にしている国内家事労働者の移動が、きわめて搾取的な要素を強く持っていることは明らかにされた。他方で、支援運動の面では、国内家事労働者と海外就労する家事労働者それぞれの権利の問題を、共通のイシューとして議論しようとする動向もあることが判明した。 (2)国内での介護労働力の配置状況について: フィリピン国内では「高齢者介護」については現時点では政策的にも社会的にも大きく問題視はされていないことが、関係省庁からの聞き取りにより明らかになった。国内での高齢者介護は全般的にコミュニティ・ボランティアや家族への依存度が高い。また、海外就労する介護労働者(caregiver)に対しては国家資格の取得が義務付けられているにも関わらず、国内で施設等に就労する介護労働者には同様の資格をまったく要求していないことが、明らかになった。これにより、フィリピンにおける「介護労働者」の養成は、ほとんどが海外向きであり、国内の高齢者介護の問題とは切り離されたまま展開していることが明らかになった。
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