2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18830037
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐々木 俊一郎 大阪大学, 社会経済研究所, 特別研究員 (50423158)
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Keywords | 情報カスケード / 社会的学習 / 信念更新 / 経済実験 |
Research Abstract |
本年度は、情報カスケードが発生しうる状況において、人間がどのように信念を更新しているかについての調査・研究を行った。具体的には、世界の状態(state of the world)が分からないが、それを示唆する私的情報または他の人の行動が逐次的に観察可能な状況において、実際の人間がどのように信念を更新しているかについての実験をインターネット上で実施した。1033人がこの実験に参加した。回答者の信念更新についてのデータを分析した結果、次の2つの事実が確認された。一つは、彼らは逐次的に観察する情報を活用して信念の更新自体は行っているものの、彼らの事後的信念はベイジアン理論が想定している事後的信念よりも常に低いことである。このことは、回答者がベイジアン流の信念更新を正確に行っていないことを意味している。二つめは、同じ情報量を持つ私的情報と他の回答者の予測という二つの情報を観察可能な場合、私的情報を観察した場合の方が他の回答者の予測を観測した場合よりも常に平均事後的確率が高くなっていることである。これは、回答者が信念更新を行う上で、私的情報の方が他人の行動よりも正確であるという自信過剰バイアスを反映していると解釈することができる。これまで多くの経済実験において、情報カスケードの発生割合がBickchandani, Hirshleifer, and Welch(1992)の理論モデルよりも低いことが観察されているが、本研究で観察された上記2つの事実は、理論と実験結果との非整合性の有力な要因と考えられる。
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