2006 Fiscal Year Annual Research Report
会計利益と課税所得の差額に関する実証的・実態的研究
Project/Area Number |
18830045
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
米谷 健司 山口大学, 経済学部, 講師 (90432731)
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Keywords | 会計学 / 税務会計 / 会計利益 / 課税所得 / BTD |
Research Abstract |
本年度は、まず会計利益と課税所得の差額(Book-Tax Differences : BTD)の傾向と決定要因について、それらがBTDの推定方法の違いに影響を受けるのか否かを確認した。従来、BTDは(1)法人税等調整額、(2)会計利益と実際の申告所得との差額、(3)会計利益と損益計算書上の納税額から推定した課税所得との差額を用いて推定されてきた。分析の結果、3種類のBTDは概して同じ傾向を示しており、いずれの場合も日本企業のBTDは平均的に負であることが明らかとなった。実際の申告所得が平成18年度から利用できなくなることを考慮すれば、他の方法によって同様の情報を入手できることを確認したことは大きな貢献である。これらは、奥田真也・山下裕企・米谷健司[2006],「会計利益と課税所得の差異(BTD)の傾向と決定要因:3種のBTDの比較」としてまとめた。なお、同論文は納税協会連合会の「第2回税に関する論文」の専門家の部の奨励賞を受賞した。また、本年度は株式市場におけるBTDの情報内容を分析するために、多額のBTDが発生している企業はそうでない企業よりもリスクが高いという仮説のもと、BTDと市場ベータとの関連性を分析した。その結果、BTDの乖離が大きいほど、市場ベータが高いことを発見した。これらは2007年1月の九州大学会計学研究会において「会計利益と課税所得の差額とリスクの関連性」(松浦良行氏と共同)として報告した。なお、同様の内容を2007年2月の税務行動研究会でも報告した。そのほか、2006年9月の山口大学経済学会第2回定例研究会において「会計利益と課税所得の差額の実態」を報告した。また2006年9月の日本経営財務学会において、鈴木健嗣・大沼宏・山下裕企「資本市場における会計情報と税務情報の有用性の変化」の報告に対する討論者としてコメントした。
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