2006 Fiscal Year Annual Research Report
0〜2歳児における情動伝染反応と自他意識の発達に関する実験的検討
Project/Area Number |
18830047
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
川田 学 香川大学, 教育学部, 講師 (80403765)
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Keywords | 乳児 / 擬似酸味反応 / 他者理解 / 共感性 / 実験的観察法 |
Research Abstract |
平成18年度には,久保田正人氏によって報告された現象(レモンを舐めさせられた6ヶ月児が,しばらく後に大人がレモンを舐めようとするところを見て,いかにも自分が酸っぱいという表情をしたという事例)を追認すると共に,手続きを実験的に設定し,月齢による変化についても検討することを目的とした。 本研究では,レモンを舐める経験をした乳児が,他者のレモン摂食場面を見て引き起こす反応を,「擬似酸味反応」として検討した。本実験には,健康な乳児(生後5ヶ月から14ヶ月)とその母親38名が参加した。なお,本実験に先立って,9ヶ.月〜17ヶ月の乳児5名を対象とした予備実験を行った。本実験において,実験者が実験群の乳児にレモンを舐めさせ,乳児の酸味反応が消失した直後及び15分後に,その乳児に実験者がレモンを舐めるシーンを見せた。主要な結果は以下のとおりである。実験群の乳児は,"顔をしかめる"および"口唇の動き"のカテゴリの頻度が,統制群より有意に多かった。この傾向は6ヶ月児においてすでにみられた。更に,"のけぞる"や"頭を掻く"などのユニークな行動も,実験群の乳児にのみ生起した。実験者は真顔(neutral face)であるため,乳児の反応は他者と同じ表情および身体動作を行う共鳴動作(初期模倣)とは異なり,何らかの仕方で他者の体験を先取り的に感じ取り,自分自身の体験のように身体反応を惹起しているものと推察された。なお,月齢的な変化については確証的な結果は得られなかった。
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