2006 Fiscal Year Annual Research Report
「良き統治」の国際法上の意義と限界-国際開発援助における理論と実践の分析-
Project/Area Number |
18830059
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
伊藤 一頼 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (00405143)
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Keywords | 開発 / 自決権 / 良き統治 |
Research Abstract |
本研究の目的は、発展途上国の開発問題を国際法の論理構造において適切に位置付けるための視座を提示することである。「開発の国際法4に代表される従来の国際法学の取り組みは、国家間関係における実質的平等論を展開するものであったが、近年の開発援助の軸足はむしろ国内の制度構築支援に移っている(「良き統治」の推進)。そして、この新たな潮流を国際法的に把握するためには、脱植民地化の過程における新国家独立の法的経緯に遡って考察する必要があることが、本研究を通じて次第に明らかになってきた。 伝統的な国家形成の理論によれば、新たな国家の成立は、事実上の国家性要件を充足することが最低条件である(事実主義)。しかし、事実上の国家性要件じたい、法的な解釈の余地を残す概念であり、'実際には、国際社会(既存国家群)が設定する付加的な考慮要因によって国家成立が左右される場合も多い(正統主義)。今日の発展途上国を成立させた脱植民地化の過程とは、事実上の実効的国家性の欠如という植民地化の際の正当化事由が、逆に国家性を獲得するための正統性基準へと反転するプロセスであった。そこで実効的国家性の欠落を埋め合わせたのが自決権であり、多くの途上国は規範的・観念的に国家性を賦与された。言い換えれば、自決権による独立は、実効的国家性が将来にわたり継続的に補完されることを必要としており、国際法上の開発問題も本質的にはここに胚胎する。 本研究では、.こうした自決権と開発問題の表裏一体性を基軸として、それが「良き統治」概念を中心とする近時の開発援助実践に対していかなる示唆を与えうるか、引き続き検討を重ねることとしたい。
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Research Products
(1 results)