2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18830065
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
林 美都子 東京福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (20406309)
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Keywords | 記憶高進 / 潜在記憶 / 記憶の無意識的過程 / プライミング手続き / テスト間間隔 / Reminiscence / Forgetting |
Research Abstract |
記憶高進とは、再学習の機会を与えずにテストのみを繰り返し行ったときに、成績が向上する現象のことを言う。ReminiscenceとForgettingという2つの下位現象からなり、ReminiscenceがForgettingを上回ると記憶高進が生起する。この現象の生起には、無意識が大きく関与しているのではないかと指摘されているが、認知心理学的な手法でそのことを確認した研究は少ない。そこで無意識的な記憶(潜在記憶)の測定法としてプライミング手続きを用いて、記憶高進が無意識的な記憶においても生起しうるか、特にテスト間間隔の長短に注目した実験を実施した。 記憶テストであることを伝える条件(顕在記憶条件)と伝えない条件(潜在記憶条件)の両方において、学習直後に3回、さらに一週間後に3回の合計6回テストを繰り返したところ、顕在記憶条件においては、テスト間間隔が短い場合、すなわち、学習直後の3回、ならびに一週間後の3回において、記憶成績の向上が見られた。ただし、テスト間間隔が一週間ある3回目と4回目では、記憶成績が低下した。一方、潜在記憶条件では、プライミング量には変化が認められず、テスト間間隔の長短に関わらず記憶成績が保たれていた。さらに、下位現象の検討を行ったところ、顕在記憶条件においては、テスト間間隔が長くなるとForgettingの量が増加しており、これが記憶高進の生起しなくなる原因であると考えられた。一方、潜在記憶条件においては、Forgettingの量は常に一定だが、テスト間間隔が長い場合には、Reminiscenceの量が増加することが示され、テスト間間隔を長くしてテストを繰り返した場合に、潜在記憶における記憶高進が生起する可能性が示唆された。この可能性をさらに追究するため、テスト間間隔を1週間設けて3回テストを繰り返す実験を実施したが、記憶高進の生起は認められなかった。
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