2006 Fiscal Year Annual Research Report
時間情報処理における大脳半球左右差:トレードオフ仮説の検討
Project/Area Number |
18830072
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
大久保 街亜 専修大学, 文学部, 講師 (40433859)
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Keywords | 大脳半球機能差 / 時間情報処理 / 時間解像度 / 心理物理実験 |
Research Abstract |
平成18年度は,仮説の検討のため心理物理実験を行った。申請書に記載した仮説は,視覚における時間情報処理において,左半球は高い時間解像度の処理の優れ,右半球は高い時間周波数解像度の処理に優れるというものであった。今年度は主にこの仮説の左半球の高時間解像度処理に焦点を当てた。実験の結果,左半球は10ms以下の極めて短い時間情報の違いを検出可能なことが示された。右半球ではこのような高い解像度の処理は不可能だった。この結果は,仮説の通り,左半球では右半球に比べ高い時間解像度の処理に優れることを示唆するものである。一方,右半球では比較的長い時間範囲における時間情報処理に優れていることが分かった。現在,この結果をまとめ,国際的な専門誌に投稿中である。また,実験の結果を平成19年度の日本心理学会大会において発表する予定である。なお,右半球における結果は,高い時間周波数解像度を得るためには大きな時間窓が必要であるという理由から,申請書で提案した仮説で説明可能である。ただし,右半球が定常的注意の機能に優れているというアイデアからも説明できる。現在,どちらの仮説が正しいか新たな実験計画を組み検討を進めている。 また,上述の視覚における定常的な注意と右半球の関わりを検討するための予備的な研究として,非制限視における注意の働きについても今年度検討した。実験の結果,注意には異方性があり視野の左側に向きやすいことが示された。そして,その結果として左側にある対象の属性が過大評価されることもわかった。また,この注意の異方性はリッカート法など心理学や社会学における調査でもっともよく用いられる方法にも影響することが分かった。この結果はPsychological Science誌に掲載された。 来年度は注意の異方性の要因をうまく統制した実験計画を立て,主に右半球の時間情報処理の特性について検討する予定である。
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