2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18830087
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Research Institution | Osaka University of Health and Sport Sciences |
Principal Investigator |
吉中 季子 大阪体育大学, 健康福祉学部, 助手 (70434800)
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Keywords | ドメスティック・バイオレンス / DV被害者 / 生活再建 / 阻害要因 / 二次被害 |
Research Abstract |
2006年度は、DV防止法の見直しに向けての論点整理と、ヒアリング調査を行った。 法の見直しへの論点整理は、DV防止法の成立過程について文献を中心にまとめ、また、全国シェルターネット会議へ参加し、DV被害者を保護する民間団体からの意見と現状の問題点を把握することにより整理を行った。 調査としては、生活再建の阻害要因をみいだすことを目的とし数人のDV被害者のインタビューを実施した。インタビューは、主に、DVで保護された後のことに重点を置き、生活再建に必要な社会保障関連制度・福祉制度などの周辺の制度面についてインタビューを行った。インタビューの目的は、当事者の経験に基づいた語りから、数量調査では見えてこない要因を拾いあげることとした。具体的には、生活を立て直していくなかでの、(1)年金制度、(2)医療保険、(3)就労に至るまでに、困難な要因について質問をした。聞き取った内容は、本人が特定されないように語りを文節化し、年金、就労などといった項目別の内容に類型化し、分析を行った。 インタビューの結果では、避難後しばらく健康保険証が使えないことや、新たに国民健康保険の加入や銀行口座の作成などにも困難が生じるといったこと、そうしたことから就労の選択の範囲まで制限しなければならないこと等が明らかになった。また、DVから避難してきて一定期間が経っても、元加害者に対する払拭できない不安感から、社会保険制度の加入への躊躇があり、そのためパート労働にとどまろうとするケースがあった。これらの阻害要因の多くは、二次的、三次的な影響として就労することにも問題が及んでいることがわかった。 また、行政機関におけるDV担当者のドメスティック・バイオレンスあるいはDV防止法の認識度の違いなどが見出され、少なからず被害者が二次被害を受けている現実もあった。
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