2006 Fiscal Year Annual Research Report
新しい不完全競争・収穫逓増モデルの構築と国際貿易の理論分析
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18830092
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
藤原 憲二 関西学院大学, 経済学部, 助手 (50434882)
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Keywords | 寡占 / 独占的競争 / 製品差別化 / 民営化 / 混合寡占 / 貿易利益 |
Research Abstract |
本課題では従来の不完全競争・収穫逓増モデルでは十分に説明することができなかった現象を明らかにすることを目的とする。最終的な目標は国際貿易論における研究を目指すが、前半の1年間はむしろ基本モデルの構築と閉鎖経済を仮定した場合の民営化政策の厚生効果を明らかにすることに重点が置かれた。 その成果はPartial Privatization in a Differentiated Mixed Oligopolyという論文として、ドイツで出版されているJournal of Economicsに完全受理された。本稿は次の2つの意義を持っている。 第1に、製品差別化を含んだ寡占モデルとして、常套的なディキシット=スティグリッツ・モデルを補完するモデルを提示したことである。ディキシット=スティグリッツ・モデルは製品差別化を定式化する扱い易いモデルだが、民営化の厚生効果を分析する際にはモデルが複雑になり、確定的な結論を得るのが難しい。それに対して、本稿で提示したモデルは各財に対する需要関数が価格に関する1次関数として求められるため、全ての内生変数を解析的に求めることができる上に、比較静学を容易に行うことができるという利点を持つ。 第2に、本稿では経済厚生を最大化するような最適な部分民営化が製品差別化の程度にどのように依存しているのかを簡単な図解で示した。しかも、寡占産業への参入がない短期と自由参入・退出がある長期ではその依存の仕方は全く異なることも証明した。つまり、最適な民営化政策は(1)当該産業がどの程度差別化されているか、(2)当該産業への参入は自由かどうか、という2つの点を考慮して決められなければならない。この結論は現実の民営化政策に対して極めて強力なインプリケーションを持つものと確信している。
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