2006 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能角度分解光電子分光法による「多バンド」超伝導体の微細電子構造研究
Project/Area Number |
18840005
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
相馬 清吾 東北大学, 大学院理学研究科, 助手 (20431489)
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Keywords | 角度分解光電子分光 / 超伝導 / A15型化合物 |
Research Abstract |
へき開面の存在しないA15型化合物の清浄試料表面を作製するために、1200度以上の電子衝撃加熱が可能な試料ホルダーを含む、試料表面作製機構を作製した。イオンスパッタリングとアニーリングにより、V_3Si単結晶の試料表面を清浄化し、低速電子回折法により明確な1x1スポットを観測し、表面再構成のない清浄な試料表面が得られている事を確認した。試料作製/評価槽から超高分解能角度分解光電子分光装置への超高真空下での試料移送機構を製作し、表面を清浄化したV_3Siについてinsituの角度分解光電子分光実験を行った。測定の結果、[100]方向、および[110]方向において、フェルミ準位近傍にあまり分散を持たない平坦なバンドが見出された。今後、これらの平坦バンドの超伝導への寄与を調べていく必要がある。バンド計算との比較から、類似のバンドは複数本あると考えられているが、おそらく結晶表面の単結晶性が十分でない等の理由により、各々のバンドに分解して観測されていない。また、予備実験として、単結晶V_3Siを真空中で破断することによって、角度積分型の超高分解能光電子分光実験(分解能1.3meV)を行い、超伝導ギャップの測定を行った。実験の結果、明確な超伝導ギャップの観測に成功し、さらに結合エネルギー5-7meVに電子-フォノン強結合構造を観測した。A15型化合物の光電子分光において、このような構造の観測は初めてである。この構造は、破断表面によって観測される場合とそうでない場合があることから、今後、結晶表面の清浄性が超伝導ギャップに与える影響についても留意していく必要があると考えられる。
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Research Products
(9 results)