2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18840010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市川 和秀 東京大学, 宇宙線研究所, 研究拠点形成特任研究員 (50401287)
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Keywords | 宇宙物理 / ニュートリノ / 宇宙背景放射 / 宇宙論パラメター / WMAP / ニュートリノ質量 / ダークエネルギー |
Research Abstract |
現在の宇宙論においては、宇宙を記述する標準的な理論が整備され、観測によってその信頼性が確立している。特に、宇宙の進化は「宇宙論パラメター」と呼ばれる膨張速度や構成要素のエネルギー密度といった少数の量によって特徴付けられることが認識され、それら宇宙論パラメターを観測から決定することが現代宇宙論の大きなテーマの一つになっている。本研究ではいくつかの重要と思われる宇宙論パラメターに関してその正確な決定を目的とした。本年度研究を行ったパラメターは、ニュートリノ質量・ダークエネルギーの状態方程式(特にその時間変化)・宇宙の曲率・結合定数の時間変化・宇宙ひもの張力である。 ニュートリノ質量に関しては、発表直後のWMAP衛星による宇宙背景放射のゆらぎの3年目のデータを用いて質量に対して0.7eVという上限を報告した。われわれが以前に予言した通り、1年目のデータから得られる制限と変わらないということが確認された。また、背景放射の偏光のデータはその制限をつけることにほとんど寄与しないことを示した。 ダークエネルギーと宇宙の曲率に関しては、それらを同時に決めるという、これまでにあまりなされていない観点から研究を行った。よく言われることとして、最近の宇宙論的観測(宇宙背景放射・Ia型超新星・バリオン振動)からは宇宙の曲率は平坦でダークエネルギーは宇宙項が示唆される、ということがあるが、これがおのおの仮定によっていることを示した。データから平坦な宇宙が示唆されるのは、ダークエネルギーを宇宙項(状態方程式が-1で一定)と仮定したり、状態方程式がスケール因子に比例して変化すると仮定したりする時である。われわれは、開いた宇宙(曲率が負)が平坦な宇宙と同じ程度かそれ以上に観測とよく合うダークエネルギー状態方程式のモデルがあることを示した。
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Research Products
(6 results)