2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18840029
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
植田 一石 大阪大学, 大学院理学研究科, 特任研究員 (60432465)
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Keywords | 三角圏 / 安定性 / コアメーバ / ミラー対称性 |
Research Abstract |
物理学者のDouglasらの仕事に触発されて、Bridgelandは2002年に三角圏上の安定性の概念を導入した.これは大雑把に言うと半安定な対象の集合と、任意の対象を半安定な対象の拡大の繰り返しに分解する手順の組である.彼はさらに安定性の集合に自然に複素多様体の構造が入ることを示し、これを三角圏の不変量として積極的に研究することを提案した.特に、射影的K3曲面の連接層の導来圏に対しては、安定性の空間が連結かつ単連結であると予想し、この予想を仮定すれば導来圏の三角圏としての自己同値群を決定できることを示した.この予想の類似として単純特異点の最小特異点解消(K3曲面の局所的なモデルと考えることができる)の上の連接層の導来圏の安定性の空間が連結かつ単連結であると予想されるが、筆者はこの予想をA_n特異点の場合に広島大学大学院理学研究科の石井亮氏、首都大学東京理工学研究科の上原北斗氏と共同で証明した。 また、複素数体上の代数的トーラスの部分多様体の偏角写像による像がPassare-Tsikhにより導入され、コアメーバと呼ばれるが、筆者は東京大学大学院理学研究科の山崎雅人氏と共同で、物理学者のHanany-VeghやFeng-He-Kennaway-Vafaらの研究に基づき、このコアメーバを本質的に用いる手法によって、Kontsevichのホモロジー的ミラー予想を、トーリックdel Pezzo曲面をトーラスの有限部分群で割った軌道体(あるいは商スタック)に対して証明した。これによりホモロジー的ミラー対称性の成立する空間の新しい無限系列を得るとともに、その系としてStokes行列が計算できるGelfand-Kapranov-Zelevinsky型の超幾何級数の無限系列を得ることが出来た。
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