2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18840034
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河備 浩司 九州大学, 大学院数理学研究院, 学術研究員 (80432904)
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Keywords | 確率解析 / rough path理論 / マリアヴァン解析 / ラプラス型汎関数積分 / 漸近展開 / ヘルマンダー作用素 |
Research Abstract |
今年度はまず、無限次元空間上のrough path理論の確率解析への応用の研究を行なった。近年、T.Lyonsにより提唱されたrough path理論は、確率微分方程式の解を伊藤汎関数と解釈して解析を行なう際に、既存のマリアヴァン解析とは異なる視点を持っており、確率解析の研究にも新たな展望を与えるものと期待される。具体的には、稲浜譲氏(東京工業大)との共同研究で、バナッハ空間値の伊藤汎関数に関するラプラス型汎関数積分の漸近展開公式を得ることが出来た。今年度の前半はこの研究成果および、前年度にドイツのBielefeld大学のMichael Rockner教授と行なった経路空間上の2階微分作用素の本質的自己共役性に関する研究成果を論文の形にまとめることに費やされた。これらの研究成果は今年度出版された海外学術誌に掲載された。 また2006年11月にイギリスに出張し、London大学Imperial校のBoguslaw Zegarlinski教授と、統計力学からの問題意識を背景に持つ無限次元空間上のヘルマンダー作用素が生成する拡散半群のエルゴード性について議論を行ない、本研究課題であるマリアヴァン解析を用いたアプローチがこの問題にも有効である認識を深め、Zegarlinski教授との共同研究の足掛かりを得た。またこの出張中に、Warwick大学、Oxford大学、London大学にて今年度前半に得られた研究成果に関する講演を行い、イギリスの確率論研究者との交流を深めた。 また2007年3月に再度イギリス出張を行い、Zegarlinski教授との議論の続きおよびOxford大学のZhongmin Qian博士とrough path理論に関する議論を行なった。これらの議論に基づく無限次元空間上のマリアヴァン解析の応用およびrough path理論に関する研究は、来年度も継続して行なう。
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