2006 Fiscal Year Annual Research Report
超音波を用いた金属間化合物におけるエキゾチック超伝導の研究
Project/Area Number |
18840041
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
渡辺 忠孝 日本大学, 理工学部, 助手 (70409051)
|
Keywords | Lu_2Fe_3Si_5 / エキゾチック超伝導 / GeCo_2O_4 / フラストレーション / 超音波 / YNi_2B_2C / ErNi_2B_2C / 反強磁性超伝導体 |
Research Abstract |
本研究では、金属間化合物における異方的超伝導等のエキゾチックな超伝導現象を研究するために、純良単結晶試料の作製、および超音波音速測定等の物性測定を行った。また、東大物性研究所との共同研究で超高分解能光電子分光による超伝導ギャップ観測の実験を行った。本年度の主な研究成果として以下の3つの成果を得た。 鉄珪化物超伝導体Lu_2Fe_3Si_5は、Feを含む超伝導体の中では最高のTc(=6.3K)を示す。比熱測定から超伝導状態での残留状態密度が非常に大きいとの指摘があり、エキゾチックな超伝導発現機構の実現が期待される。これまで多結晶試料での実験の報告しかなかったため、我々はより詳細な研究を目指して単結晶試料の作製を試み、アーク溶融法およびフローティングゾーン法を組み合わせた手法により大型単結晶試料の作製に成功した。 スピネル化合物GeCo_2O_4における超音波音速測定を行った。この物質はT_N=20.8Kで反強磁性転移を示す一方で、常磁性でのワイス温度はΘ_Wを=12.OKと強磁性的相互作用が支配的であることを示唆しており、数の交換相互作用の競合の可能性が指摘されている。実験の結果、常磁性領域において磁性Co^<2+>イオンのスピン状態を反映した顕著な弾性率のソフト化が観測された。この結果からGeCo_2O_4のCo^<2+>サイトはフント則が支配的な高スピン状態であるという結論を得た。また、反強磁性状態での測定から、磁気転移を示唆する複数の弾性異常を観測した。 ホウ炭化物超伝導体YNi_2B_2CおよびErNi_2B_2Cの光電子分光測定をいった。YNi_2B_2Cが非磁性の超伝導体であるのに対して、ErNi_2B_2Cでは反強磁性と超伝導が共存する。実験の結果、いずれの物質でも明瞭な超伝導ギャップ構造の観測に成功し、特にErNi_2B_2Cにおいて反強磁性秩序の形成に起因すると思われる超伝導ギャップの特異な抑制効果が観測された。
|