2007 Fiscal Year Annual Research Report
スピン・電子ドープを用いたフラストレート磁性体の相競合機構の研究
Project/Area Number |
18840046
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
東中 隆二 The Institute of Physical and Chemical Research, 高木磁性研究室, 基礎科学特別研究員 (30435672)
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Keywords | イジング磁性体 / 双極子相互作用 / アンチグラス状態 / 量子相転移 |
Research Abstract |
各磁性サイトにランダムな磁場が存在し、その総和がゼロとなる、ランダム磁場モデルが通常の磁性体とは異なる新奇な磁性を示すことが理論的に予想され注目を集めているが、そのモデルを実現する候補物質である希釈双極子イジング磁性体は今までLiHo_xY_<1-x>F_4(LHYF)の一つだけしか知られておらず、またこの物質は大きな超微細相互作用により低エネルギー励起が重要になる領域でモデルからずれるため、より理想的な物質による研究が待ち望まれていた。 本研究では新たな希釈双極子イジング磁性体であるR_xY<1-x>(OH)_3(R=Dy,Ho)の単結晶育成を行い、低温磁化、比熱測定および、横磁場中低温磁化率測定により、その新奇な磁気基底状態の検証を行った。試料育成に関しては、Dy,Hoの両物質に対して、磁性イオン濃度をより細かく振り、またより希薄な濃度の単結晶も含めた試料育成(x=0.025-1)に成功した。それらの物質の低温物性測定から、横磁場を印加することにより基底状態の強磁性状態が、常磁性に量子相転移することを観測した。量子相転移自体はLHYFにおいても観測されていたが、超交換相互作用が小さいDyの系において、低エネルギー励起が重要になる領域においても、より顕著に観測され、本物質がより理想的なモデルであることを明らかにした。また、LHYFと同様に、磁性イオン濃度が減少するに従って、強磁性転移温度が低温に移行し、基底状態が強磁性からスピングラスに変化することを観測したが、スピングラス相の下にさらに低温に磁気相が存在することを発見した。まだその詳細は明らかになっていないが、LHYFにおいて観測される新奇なグラス相であるアンチグラス状態との関連性が予想される。
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