2006 Fiscal Year Annual Research Report
光変調差分テラヘルツ時間領域分光法の開発とイオン液体-溶質分子系の局所構造の解明
Project/Area Number |
18850011
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 晃司 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 特別科学研究員 (70432507)
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Keywords | テラヘルツ波 / イオン液体 / フェムト秒レーザー / 光変調 / 局所構造 / 超高速ダイナミクス / 液体構造 |
Research Abstract |
テラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS)ではTHz波の電場(E(t))を測定し、3cm^<-1>から200cm^<-1>の複素誘電率を一度に導出することができる。分子間振動などの低振動数モードがこのエネルギー領域に分布しているため、THz-TDSを用いて分子間相互作用とそのダイナミクスとを調べることができる。本研究課題は,THz-TDSによって溶質周囲のイオン液体の局所構造に由来する振動モードの詳細を明らかにし、溶質と相互作用しているイオン液体の局所構造とそのダイナミクスに関するミクロ的な描像を得ることを目的としている。今年度は、局所構造に関する更なる知見を得るため、イオン液体のテラヘルツスペクトルの温度依存性と溶媒希釈依存性を調べた。 固体状態における1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネート(融点286〜290K)のテラヘルツ誘電率虚部スペクトルの温度依存性から、280Kにおけるスペクトルは非常にブロードであり、温度の降下とともにスペクトルが変化することがわかった。特に、120Kよりも低温でのスペクトル変化が著しく、バックグラウンドの吸収強度の減少とともに、バンドが先鋭化及びシフトし、複数のバンドに分裂する。これは、固体状態であっても微視的な構造が大きく変化していることを示しており、一般的な固体よりも構造が柔らかいことを示唆する。温度の下降および上昇過程で測定した同一温度のスペクトルは互いに一致するので、イオンの並進自由度は凍結しているものと考えられる。従って、固体状態でも振れなどの局所的な運動が凍結していないことが示唆される。120Kよりも高温であらわれる非常にブロードなスペクトルとあわせて、これらの結果は、イオン液体の無秩序性、つまり、ガラス的性質を示すものであると考えている。
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