Research Abstract |
社会基盤構造物の老朽化の進展や,急速に進む少子高齢化などによる厳しい予算状況下,効果的なメインテンスに対する社会的ニーズはきわめて高い.本研究では,社会基盤構造物に対する効果的なメインテナンスを実現するために,振動計測を利用したモニタリングにより高精度に構造物の健全性を評価し,さらにそれらをデータベース化してメインテナンスに関する意思決定を支援するシステムの構築を目的とする. これまでに,トータルステーション上にレーザードップラー速度計(以下,LDV)を搭載することで,非接触かつ遠隔的にスキャニング振動計測を可能にするシステムの開発を進めてきた.その中で,LDVによりケーブル材の振動特性を把握できること,小規模な吊形式橋梁において自動連続的に多数のケーブル材を振動計測できること,測量用のプリズムを使用することにより約2kmの超遠距離計測が可能なこと,を確認している.また,ポータブルタイプLDVを利用した振動計測システムを構築し,多々羅大橋南側84本全ケーブルの振動計測を実施した.今後は両者のシステムについて,長大橋梁をはじめ大型構造物への適用を行い,本システムの実用化を目指す. さらに,既設鋼道路橋において,無線LAN加速度計を利用した振動計測モニタリングを実施した.その中で,伸縮継目の段差に基づいて発生する衝撃が支承に伝播する現象を把握したものの,センサの価格から数量に制約が生じ,現象の正確な理解までには至っていない.MEMS技術の進展により,要素技術を利用したセンサネットワークによる広範囲なモニタリングが可能な状況となっている.そのため,今後は従来の装置一式よりもコストを数十分の一にして多点同期計測を可能にするMEMS技術を利用したセンサノード開発を進める.実構造物への適用も含めながら,精度,動作などに関する検証を行う.
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