2007 Fiscal Year Annual Research Report
オルガネラゲノムの母性遺伝現象を支配する分子機構の解析
Project/Area Number |
18870018
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松島 良 Okayama University, 資源生物科学研究所, 助教 (80403476)
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Keywords | タルウマゴヤシ / オルガネラゲノム / 色素体 / 両性遺伝 / 母性遺伝 / 花粉 |
Research Abstract |
植物では核以外に色素体とミトコンドリアにDNAが存在する。これらのオルガネラゲノムは、多くの作物で片親遺伝(母性遺伝)することが知られている。すなわち、雄性配偶子(精細胞)のオルガネラゲノムは受精により後代へは伝達されず、卵細胞由来のオルガネラDNAのみが遣伝する。母性遺伝を保証する分子機構の実体は不明である。一方、被子植物のうち、約20%の種では色素体ゲノムを両性から遺伝する事が知られている(両性遺伝型植物)が、両性遺伝型植物と母性遺伝型植物の違いを規定する分子機構に関しても未知である。 本研究では上述したオルガネラゲノムの遺伝現象を支配する分子機構の解明に関する基礎研究を行った。本年度は、マメ科の牧草であるタルウマゴヤシ(Medicago truncatula)の色素体ゲノムの両性遺伝性に関して解析を進めた。遺伝学的に色素体ゲノムの両性遣伝性を確認するために、二つの生態型間(A17とA20)で発見した色素体ゲノムの多型を指標にしたdCAPS解析を行い、生態型間の交雑により得たF1植物とF2植物において色素体ゲノムの組成(雌雄どちらに由来するのか)を明らかにした。特に器官別(子葉、初生葉、複葉)に雌雄の色素体ゲノムの組成を解析することで、発育ステージにおける雌雄の色素体ゲノムの分離を追跡する事に成功し、下記の結果を得た。 タルウマゴヤシの色素体ゲノムは確かに両性遺伝性を示す。 後代に遺伝した雌雄両方の色素体ゲノムはFl植物の発達中に栄養分離(vegetative segregation)する。 栄養分離はF1世代で完了しF2植物には、雌雄どちらか一方の色素体ゲノムのみが伝達される。 今後、タルウマゴヤシを両性遺伝型植物のモデルとすることで、母性遺伝型植物との比較解析が進むことが期待される。 Plant Cell Physiol. (2008) 49:81-91
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