2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18870032
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
海老原 淳 National Museum of Nature and Science, Tokyo, 植物研究部, 研究員 (20435738)
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Keywords | シダ植物 / 配偶体 / 分子同定 / 植物分類学 |
Research Abstract |
2008年度は奥多摩・秩父で設定した配偶体調査メッシュ(1m×1mの中に、10cm×10cmのメッシュを100区画設定)での調査を重点的に行い、並行して国内各地から得られた配偶体サンプルの解析も行った。奥多摩・秩父での調査地では、各メッシュからサンプリングした配偶体を葉緑体rbcL遺伝子を用いた分子同定にかけ、対応する胞子体の種を推定した(野外から採集した配偶体は、左右対称軸で半分に切断し、半分をDNA抽出に、残り半分を証拠標本として保管した)。周辺に生育している胞子体の調査を行ってリストを作成し、胞子体の種組成との比較を行った。その結果、多くの配偶体は同所的、あるいは近辺に同種の胞子体が生育していることが示唆されたが、ハート型でない不定形・リボン形を持つ一部の種では、胞子体から遠くはなれた地点に配偶体が単独で生育していることが示唆された。 一方、「配偶体フロラ」の季節変動を解明するため、奥多摩の同一地点において、季節を変えて(6月と11月)同一方法で配偶体をサンプリングし、分子同定によって種組成を比較した。その結果、調査メッシュ内では有意な種組成の変化は観察されなかった。本研究にあたっては、配偶体の分子同定精度を高めるため、日本産のシダ植物胞子体のrbcL遺伝子塩基配列情報を網羅することを目指しているが、2008年度内に日本産種の約7割の塩基配列が決定され、多くの群で種レベルまでの分子同定を行うことが可能になった。 本研究によって、従来知る術が皆無であったシダ植物の「配偶体フロラ」について、技術的な問題は全て解決され、知らざれる種組成・分布傾向の一端を明らかにすることができた。
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