2006 Fiscal Year Annual Research Report
クロマグロ仔魚の輸送過程と初期生残に影響を及ぼす環境要因に関する数値計算学的研究
Project/Area Number |
18880008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北川 貴士 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助手 (50431804)
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Keywords | クロマグロ / 卵・仔稚魚 / 水温 / 輸送・拡散モデル / エネルギーコスト / 黒潮 |
Research Abstract |
クロマグロの産卵場・期が他のマグロ類に比べて限定される理由について、輸送・拡散モデルを用いて卵・仔稚魚の日本沿岸の温帯海域への輸送過程を明らかにすることにより検討した。 (独)海洋研究開発機構で開発された超高解像度海洋大循環モデル、Ocean General Circulation Model for the Earth Simulator(月別・水平0.1°グリッド)を用いた。20〜30°N,120〜140°Eで1°ごとに擬似粒子を投入し、1950〜2003年6月より90日間の輸送過程を調べた。粒子投入60〜90日後までに本州太平洋岸に到達したものを生残した稚魚とみなした。水温データは海上保安庁・日本海洋データセンターの1°ごとに平均化されたものを用いた。 結果の概要を以下に示す。135°E以西で投入した粒子は黒潮に取り込まれ、その後32°N以北に輸送される傾向にあったのに対し、135°E以東・25°N以南に投入した粒子の多くは、90日を経過した時点でも黒潮には取り込まれず、結局日本沿岸に輸送されることはなかった。このことから、クロマグロは南西諸島東方の限られた海域で産卵し、発生直後の遊泳能力の乏しい浮遊期に、うまく黒潮に取り込まれることで、少ないエネルギーコストで温帯海域に逃れる戦略を採っているものと考えられた。さらに、産卵場およびその年生まれの本種が最初に来遊するとされる高知沖の水温の経月変動を調べた結果、7・8月の産卵場付近の水温は30℃近くなる一方で、10月以降の高知沖の水温は急激に低下することから、本種は5・6月ごろに産卵活動を行わなければ、産卵場では仔魚は高水温のために,日本沿岸では低水温のために死滅してしまうことが示唆された。
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Research Products
(3 results)