2006 Fiscal Year Annual Research Report
有害赤潮を形成するコクロディニウムの個体群識別と分布
Project/Area Number |
18880019
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岩滝 光儀 長崎大学, 環東シナ海海洋環境資源研究センター, 助手 (50423645)
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Keywords | 海洋生態 / 系統進化 / 遺伝子 / 赤潮 / 個体群 |
Research Abstract |
無殻渦鞭毛藻Cochlodinium polykrikoidesは,西日本と韓国沿岸域において近年最も大きな漁業被害を引き起こしている有害赤潮原因種である。本種は海流に依存した移動が報告されており,この特性により例年様々な海域に赤潮被害が拡大していると考えられる。本種赤潮の発生過程を理解するためには,種内の地域系群(個体群)を識別し,西日本で有害赤潮を形成する個体群の分布範囲を特定した上で,その初期発生海域を把握することが必要となる。本種の個体群維持には,休眠細胞(シスト)と遊泳細胞の2形態が考えられるが,本種は約12℃以上の海水温で増殖可能であるため,遊泳細胞で越冬できる海域は限られている。本研究は,東アジア及び東南アジアに出現するC. polykrikoidesを分子生物学的手法を用いて個体群を識別し,個体群レベルでの分布範囲と移動を明らかにすることを目的として行った。今年度は,西日本,韓国,フィリピン・マニラ湾,マレーシア・サバより本種と類似種の遊泳細胞を入手し,形態観察とLSUrDNAを用いた系統解析を行った。その結果,細胞を約2周する横溝をもち連鎖群体を形成することからC.polykrikoidesと形態的に類似するCochlodiniumの一種が,縦溝の位置と葉緑体の形状より同種と識別でき,遺伝的にも異なることを確認した(記載論文投稿中)。また,C. polykrikoides種内はLSUrDNA塩基配列により大きく3つに識別されることがわかった。この中で,西日本と韓国に出現する細胞は,遺伝的に東南アジア(フィリピン・マレーシア)に分布する細胞と遺伝的に異なったため,例年日本と韓国に出現する同種赤潮は東南アジアより流れ着いているのではなく,東シナ海周辺海域で越冬していることが示唆された。
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Research Products
(3 results)