2006 Fiscal Year Annual Research Report
胚性幹細胞の未分化維持および分化制御に関わる細胞外因子の探索
Project/Area Number |
18880024
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
三浦 巧 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助手 (60405355)
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Keywords | 胚性幹細胞 / 分化 / メチル化 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
エピジェネティクス修飾の主な役割は、発生・細胞分化期におけるゲノムDNAのメチル化を確立することである。また、メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ(MAT)は、メチル基の供与体であるS-アデノシルL-メチオニン(SAM)の産生に関与していることより、DNAメチル化を制御する分子として注目されている。そこで本研究では、MATのアイソフォームの1つであるMATIIが胚盤胞期以降のDNAメチル化修飾と深く関与していると考え、細胞分化期におけるMATIIの役割について検討した。胚盤胞より単離されるES細胞と類似の性質を有する分化多能性癌細胞(EC細胞)を胚盤胞期のモデル細胞として用い、以下のような解析を実施した。EC細胞の分化過程において、MATIIのサブユニットであるMAT2AおよびMAT2Bの遺伝子発現を解析したところ、両遺伝子ともEC細胞の初期分化段階において減少していた。興味深いことに、終末分化した種々の細胞株におけるMATIIのタンパク量は、初期分化後のEC細胞と比較して著しく減退していることも判明した。よって、MATIIの発現レベルは未分化幹細胞の分化の程度と深く相関していることが示唆された。次に、MATIIの触媒活性を担うMAT2A遺伝子のプロモーター領域上には、CpG配列が多く存在していたことから、分化に伴ったMAT2A遺伝子の発現抑制にはプロモーター領域のメチル化が予想された。しかしながら、Bisulfite Sequence解析の結果より、MAT2A遺伝子のプロモーター領域は細胞分化よってメチル化を受けてないことが判明した。以上の結果より、幹細胞分化期におけるMAT2Aの発現抑制はプロモーター領域のメチル化によるものではなく、転写活性化因子の減退によるものと示唆された。
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