2006 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルスはどのようにして宿主プランクトンを見分けるか?
Project/Area Number |
18880044
|
Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
白井 葉子 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所赤潮環境部, 研究支援職員 (90435850)
|
Keywords | ウイルス / 赤潮 / 吸着 / インテイン / レセプター / ヘテロシグマ / 宿主特異性 / 感染 |
Research Abstract |
赤潮原因ラフィド藻ヘテロシグマ・アカシオに感染する大型2本鎖DNAウイルスHaVは、株間で異なる種内宿主特異性を有する。また、宿主側のヘテロシグマ・アカシオもHaV感染に対して株間で異なるウイルス感受性スペクトルを示す。接種試験の結果、宿主側は6タイプに、ウイルス側は4タイプにそれぞれ群別されることが明らかとなった。これらの4タイプのHaV計31株より、その必須酵素であるDNAポリメラーゼの活性部位領域をPCRにより増幅し、その配列を検討した。その結果、すべてのHaV株でほぼ同一配列のインテイン(タンパク質イントロン)が活性中心であるYGD/TDSに挿入されていることが明らかとなった。この結果は、種内宿主特異性という表現形において異なる性質を持つHaV株間で、共通の利己的遺伝子の挿入がみられたことを意味している。種内宿主特異性という表現形は、宿主細胞の進化に対応して変化する必要がある。インテインの進化速度は、種内宿主特異性決定に係る遺伝子の進化速度に比べてきわめて遅いのであろう。 また、分子内に74個のアミノ酸配列からなる約20個の繰り返し構造を持つ巨大分子(予測分子量からVp183と命名)の遺伝子のロングPCRによる増幅を試みたが、バンドを得るには至らなかった。おそらく多くの繰り返し構造がPCRのライゲーションおよびエクステンションの過程を阻害しているのであろう。今後は、繰り返しモチーフごとの増幅を試み、モチーフ間の微妙な配列の差異とその出現頻度でHaV株を特徴つける方向で実験を実施するのが適切であると考えられる。
|