2006 Fiscal Year Annual Research Report
トランスポーターを機能性器材として利用した薬物治療法の開発
Project/Area Number |
18890016
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山口 浩明 東北大学, 病院, 助手 (80400373)
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Keywords | 蛍光プローブ / 薬物スクリーニング / トランスポーター / OATP1B3 / 抗癌剤 / ハイスループット |
Research Abstract |
申請者は、現在有効な治療法の設定が強く求められている癌や感染症の治療をより安全かつ適正なものにすることを目的とし、体内動態制御因子であるトランスポーターの特性を最大限に生かした薬物スクリーニングシステムを確立した。 まず有機アニオントランスポーターOATP1B3(organic anion transporting polypeptide 1B3)の安定発現細胞株を樹立し、7-nitrobenz-2-oxa-1,3-diazole(NBD)で標識した5種の蛍光胆汁酸の輸送活性を評価した。その結果、NBD標識ケノデオキシコール酸(CDCA-NBD)が最も効率よく輸送されることを見出した。続いて、CDCA-NBDを蛍光プローブとして用い、薬物スクリーニングシステムの構築を行った。従来の共焦点レーザー顕微鏡を用いた検討では、リアルタイムかつ多検体の同時解析は困難であったが、セルファンクションイメージャーIN Cell Analyzer 1000を用い、イメージング技術を用いたマススクリーニング法の可能性を検討した。96 well plateに7.0x10^3細胞/wellの細胞密度で播種し、翌日に70%程度コンフルエントになったところで実験に供した。CDCA-NBDを0.1μMに設定したとき、イメージングコントラストが最大(シグナル/バックグラウンド比が最高)となり、OATP1B3の輸送基質であるbromosulfophthaleinによって可視的に輸送の阻害が観察された。 本法を用いて18種類の抗癌剤について5及び20μMの2段階の濃度でスクリーニングを行った。18種の抗がん剤のうち、5μMでは3種、20μMでは9種の抗癌剤が有意な阻害を示した。20μMにおいて、OATP1B3の輸送基質として報告されている、methotrexateよりも阻害が強いものは、docetaxel、actinomycin D、mitoxantrone、paclitaxel、イリノテカンの活性代謝物であるSN-38の5種であった。さらに、本スクリーニングシステムの評価として、スクリーニングにより抽出されてきた5種の抗癌剤について輸送実験を行い、OATP1B3の輸送基質となるか否かを検討したところ、SN-38がOATP1B3の輸送基質であることを明らかにした。 以上の結果より、申請者は蛍光プローブを用いた新規の薬物スクリーニングシステムを構築し、新規輸送基質の探索が可能となった。本法は多くの化合物の中からハイスループットに基質薬物を特定することができ、トランスポーターを標的とした新規治療法の開発に役立つものと思われる。
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Research Products
(8 results)