2006 Fiscal Year Annual Research Report
エイコサペンタエン酸による心血管保護効果の分子機序の解明
Project/Area Number |
18890018
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安田 聡 東北大学, 大学院医学系研究科, 助教授 (00431578)
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Keywords | 急性冠症候群 / 電気生理学 / 血管生理学 / 分子生物学 |
Research Abstract |
【研究の目的】:魚にはn-3多価不飽和脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれている。最近、n-3多価不飽和脂肪酸の高率摂取(The Japan Public Health Center-based(JPHC)study)やEPA投与(Japan EPA Lipid Intervention(JELIS)study)により冠動脈イベント発症率が有意に低下することが報告されているが、予防効果の分子機序については未だ不明な点が多い。本研究では、EPAによる心血管保護作用についてヒトに近い大型動物(ブタ)の心筋梗塞、虚血・再灌流モデルを用いて検討することを目的とする。 【方法】:ブタ心筋梗塞モデル:ブタ(雄、生後3〜5ヶ月,体重25〜30kg)をEPA投与群と対照群の2群に分ける。対照群はregular dietのみで飼育するのに対し、EPA群ではregular dietに加えEPA 600mg/kg/日を21日投与する。22日目バルーンカテーテルを用いて左回旋枝を90分間閉塞し心筋梗塞モデルを作成する。 【結果:本年度の研究実績】EPA21日間投与後の赤血球膜濃度は5.85±0.61[mean±SD]mol/%(対照群0.70±0.12mol/%)であり、JELISで報告されたEPA慢性投与後血漿濃度と同等のレベルまで上昇が認められた。セロトニン冠動脈内投与により血管反応性を評価したところ、血管径2.7mm(平均)の中血管(EPA群:-1.5±1.6vs対照群:-9.1±5.2%control)、血管径0.6mm平均)の小血管(EPA群:-8.0±4.5vs対照群:-35.4±10.9%control)ともに、EPA群で血管収縮が抑制されていた。虚血・再灌流より対照群(n=8)では全例が電気的除細動抵抗性の心室性不整脈のために死亡したのに対し、EPA投与群(n=7)では死亡は2例のみであった。急性生存率に明らかな差異が認められた(EPA群=71%vs対照群:0%,P<0.01)。以上より、EPAは1)冠動脈の過収縮を抑制する2)虚血・再潅流性不整脈を抑制することで、冠動脈イベント発生時の急性期生存を向上させ得ることが示唆された。 【今後の研究の展開】血管反応性については当教室が研究を推進しているRho-キナーゼ活性化の関与についてその選択的阻害薬であるhydroxyfasudilを用いて評価する。EPAの抗不整脈作用については虚血領域での単相性活動電位(monophasic action potential : MAP)の解析により検討する。心室筋のMAPと細胞内活動電位を同時記録した実験でこの両者の持続時間はほぼ一致することが証明されておりEPAの電気生理学的な知見が得られることが期待される。
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