2006 Fiscal Year Annual Research Report
量子化学・分子力学的手法を利用した抗ウイルス剤開発指向ドッキングスタディ
Project/Area Number |
18890098
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川下 理日人 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助手 (00423111)
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Keywords | 蛋白質 / 抗ウイルス剤 / シミュレーション / ドッキングスタディ / ホモロジーモデリング / 変異 / インフルエンザ |
Research Abstract |
今回の研究ではまず、H1N1およびH5N1のノイラミニダーゼ(NA)における変異情報を取得するため、NCBIのInfluenza Virus Resourceより取得したヒトのH1N1およびH5N1のノイラミニダーゼ(NA)配列それぞれ415本、132本を用いて配列解析を行った。ここでは、H5N1-NAには、H1N1-NAには稀な19残基の欠失を確認した。H5N1-NAではH1N1に比べ、赤血球からのウイルス溶出能が減少している可能性があると考えられていることから、この欠失の意味に関して、引き続き三次元構造から精査する予定である。 続いて、統合計算化学ソフトウェアmoeを用いて、H5N1-NAのPDBファイル(2HU0.pdb)を読み込み、この構造に対し、水素原子の付加と重原子の位置を固定して構造最適化を行った。この最適化した構造を用いて、リン酸オゼルタミビルから10Åの範囲内にある残基を抽出し、非保存部位に関する情報を取得した。H5N1-NAではこの非保存部位は24存在し、そのうち8つは、NAのリン酸オゼルタミビル結合部位から5Åの範囲内にあることを確認した。 今後、この非保存部位の解析から今後起こりうる変異を予測し、そこから推測される蛋白質の配列を用いて、ホモロジーモデリングによるNAの構造予測を行う。また、この予測した蛋白質を用いて既知阻害剤とのドッキングスタディを行い、どのような変異が阻害剤の活性に影響するかを精査する。また最近、リン酸オゼルタミビル耐性のH5N1-NAを用いたホモロジーモデリングが報告されており、そこではリン酸オゼルタミビルのアルキル側鎖部分と結合するNA残基が親水性から疎水性へと変化したことにより、阻害剤の活性が低下していると推測されている。このような文献情報と、実際の計算による情報とを組み合わせ、新たな阻害剤設計への道筋を提示したい。
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