Research Abstract |
1型糖尿病の根治療法としての異種膵島移植の臨床応用を目標に研究を継続してきた.ブタ-ヒトdiscordant異種移植においては,ブタ細胞表面上に発現している異種糖鎖抗原であるα-gal抗原をヒトに存在する自然抗体anti-galが認識し引き起こす超急性拒絶反応(Hyper acute rejection ; HAR)が知られている.幸い,α-gal抗原はブタ膵島表面には発現していないが,Hanganutziu-Deicher(HD)抗原を始めとするnon-gal抗原もヒト血清に対し抗原性を有しており,non-gal抗原の抗原性を抑制することが,異種膵島の長期正着の鍵となる.今回の研究では,機能グライコミックスの手法を用いて,ヒト血清に対し抗原性を有するnon-gal抗原を網羅的に解析し,その抗原性を抑制する方法を開発することを目的としている.【方法】屠場で入手したブタ膵臓を,予め酸素化したperfluorocarbon(PFC)を下層,タンパク分解酵素であるulinastatinを添加した溶液を上層に置く二層法を用いて研究室まで搬送,Ricordi法を用いてブタ膵島を分離した.膵管カニュレーション部よりLiberase HI溶液を注入し,膵臓を膨化した.Ricordi chamberに膵臓を移し,dynamic incubationにて膵臓を消化した.サンプルはdithizone染色し,顕微鏡下に消化の程度を確認した.COBE2991セルプロセッサーを用いた遠心分離法にて膵島を純化した.分離膵島のインスリン分泌能は,in vitroグルコース負荷試験で評価した.大阪大学医学部附属病院輸血部より廃棄FFPを入手(A型,B型,O型,AB型)した.【結果】分離膵島はpure fractionで80%以上のpurityおよび90%以上のviabilityのものが安定して得られるようになった.In vitroグルコース負荷試験(高グルコース刺激/低グルコース刺激)は6.5と,インスリン分泌能を確認した.【結論】分離膵島のpurity,viabilityともに良好で,実験に使用しうるブタ膵島が安定して得られるようになった.次年度は得られたブタ膵島より糖タンパク質を抽出し,二次元電気泳動にてnon-gal抗原を網羅的に解析する予定である.
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