2006 Fiscal Year Annual Research Report
軽度認知機能障害患者の早期診断法の開発:心理物理学的,電気生理学的研究
Project/Area Number |
18890131
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山崎 貴男 九州大学, 医学研究院, 助手 (70404069)
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Keywords | 軽度認知機能障害 / アルツハイマー病 / 認知症 / 視空間認知障害 / 運動視 / オプティックフロー / 事象関連電位 / 運動認知閾値 |
Research Abstract |
【背景】 視覚情報は一次視覚野(V1)から頭頂葉に至る背側路(運動視,立体視)とV1から下側頭葉に至る腹側路(形態視,色認知)により並列処理される.アルツハイマー病(AD)患者では背側路の障害のため,迷子の原因の1つである視空間認知障害が病初期から認められる.ADの根本的治療法はまだ確立していないため,ADの前駆段階である軽度認知機能障害(MCI)患者を早期に診断し治療を開始することにより,ADへの移行・進行を抑制する必要がある. 【目的】 視空間認知(背側路)障害を詳細に検討できる運動視刺激を用いた心理物理学的閾値測定および事象関連電位(ERP)により,非侵襲的に簡便にMCIの潜在的な視空間認知(運動認知)障害を見出す.それによりADに移行する可能性があるMCIを早期に診断し,早期治療に貢献する. 【方法】 対象は健常若年者,老年者各15名,MCI13名.黒色の背景画面上に400個の白色ドットからなる水平方向(HO),放射状方向(OF)運動刺激を呈示し,共同運動レベル(5-70%)を変えて運動認知閾値を測定した.次に90%共同運動レベルのHO,OF刺激およびランダム運動(RM)刺激を呈示し,頭頂・後頭部よりERPを記録した. 【結果】 運動認知閾値は加齢で低下し,OF刺激で老年者に比べMCIがより低下した.ERPではRMとHO刺激で頭頂・後頭部を中心にN170が記録され,OFでN170とP200が記録された.加齢によりN170,P200の振幅が低下し,MCIではOFに対する反応低下が老年者より著明だった.若年者ではOFのN170,P200はランダム運動に順応しないが,老年者,MCIでは著明に反応が低下した. 【今後の課題】 今回の結果から,MCIでは健常者に比べOF刺激に対する認知閾値が上昇し,ERP反応が低下することがわかった.従って,これらを指標にMCIを早期に診断できる可能性が示唆された.今後は,その他の認知症(前頭側頭型認知症や脳血管性認知症)患者に同課題を行い,今回得られた結果がMCI患者に特異的であるかを検討していく.
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