2007 Fiscal Year Annual Research Report
歯周病原性細菌における早産・低体重児出産に関わる分子基盤的研究
Project/Area Number |
18890136
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
瀧井 良祐 Kyushu University, 歯学研究院, 助教 (00419558)
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Keywords | 歯周病 / 早産・低体重児出産 / ジンジバリス菌 / ジンジパイン |
Research Abstract |
本研究は、歯周病の最重要原因菌と考えられているジンジバリス菌の早産・低体重児出産に対する関連性を明らかにし、その分子機構を明らかにすることにあった。実験動物を用いた結果から、ジンジバリス菌が産生するシステインプロテアーゼであるジンジパインが、ジンジバリス菌によって引き起こされる早産・低体重児出産の重要なリスクファクターであることが示された。ジンジバリス菌は、マウスに強力な炎症性サイトカインの分泌を促した。またこれを裏付けるように、ジンジパイン欠損ジンジバリス菌では、マウスにほとんど炎症性サイトカインの誘導や早産・低体重児出産を誘導しなかった。また、ジンジバリス菌は、宿主の各臓器の中でも特に胎盤への強い定着および増殖を示し、胎盤に侵入したジンジバリス菌が、胎児や胎膜に波及し胎膜を構成する筋肉の早期収縮を促し、これが早産・低体重児出産を引き起こす可能性が示唆された。さらに、この実験系にジンジパイン阻害剤を追加したところ、ジンジパイン阻害剤は、ジンジバリス菌が引き起こす早産・低体重児出産を予防し、この原因として炎症性サイトカインの産生の抑制ではなく、胎盤でのジンジバリス菌の定着および増殖を抑制したことであるとわかった。これらの結果から、ジンジパイン阻害剤の投与は、ヒトの歯周病の予防だけでなく、歯周病が引き起こす早産・低体重児出産に対しても、有効な効果を示すことが示唆され、今後は本研究成果で得られた結果のヒトへの応用が望まれる。
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