2007 Fiscal Year Annual Research Report
最新分子生物学的手法を用いた哺乳う蝕発生メカニズムの解明
Project/Area Number |
18890143
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
佐藤 恭子 Nagasaki University, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (70404499)
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Keywords | ミュータンスレンサ球菌 / 哺乳齲蝕 / 16s rDNA / リアルタイムRT-PCR / ラクトース / 酸産生 |
Research Abstract |
一般に齲蝕はKeyesの輪で示される様に、歯、食物(=スクロース)、細菌の三要素が揃って生じるものであり、哺乳齲蝕は一般に上顎前歯唇面に停留した母乳、人工乳が原因となって生じる齲蝕である。しかし哺乳齲蝕を考える場合、母乳や多くの人工乳には、ラクトースは含まれるものの、スクロースは含まれない。また、ミュータンスレンサ球菌の歯面への定着の多くは2歳以降である。さらに、スクロース非存在下ではミュータンスレンサ球菌はプラークバイオフィルムの形成に必要なグルカンを合成できないため、歯面に定着できない。これらのことから、哺乳齲蝕の原因菌をミュータンスレンサ球菌とするのは疑問が残る。 これまで我々は、ミュータンスレンサ球菌が哺乳齲蝕の原因菌となり得るかどうかの検証をin vitroの系で行ってきた。その結果、浮遊培養系のミュータンスレンサ球菌は乳糖から酸産生を行うものの、人工的に作成したグルカンバイオフィルム中のミュータンスレンサ球菌は、乳糖から酸産生を行わないことを明らかにし、論文として発表した。また、ヒトの齲蝕に関与する主たるミュータンスレンサ球菌のうち、Streptococcus mutansに対して、乳糖の代謝に必要な乳糖の分解酵素β-ガラクトシダーゼのmRNAレベルでの発現の観察をリアルタイムRT-PCRを用いて行った。その結果、グルカンバイオフィルム系でのβ-ガラクトシダーゼの発現量は、浮遊培養系のそれより減少しており、グルカンバイオフィルム中のS.mutansは殆ど乳糖の代謝を行っていないことを明らかにし、第45回日本小児歯科学会および第49回歯科基礎医学会学術大会並びに総会にて報告した。
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