2018 Fiscal Year Annual Research Report
First-principles simulations of molecules in intense laser fields
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18F18011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 顕一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70344025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LI YANG 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 高次高調波発生 / 第一原理計算 / 高強度場物理 / アト秒科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、高強度レーザーが引き起こす高次高調波発生(高強度のフェムト秒レーザーパルスを物質に照射すると、波長変換によって高次の倍波(照射した光が持つ振動数の整数倍の振動数を持つ光)が発生する現象)やトンネルイオン化(光子の吸収ではなく光の強い電場によるイオン化)などの高強度場現象、アト秒パルスが引き起こす電子のダイナミクスを第一原理計算で研究し、世界を先導する成果をあげてきている。本研究では、実在の3次元アルカリ金属原子(LiおよびNa)からの高次高調波発生における電子相関ダイナミクスを、理論的に研究した。手法としては、原子中の全ての電子を考慮できる第一原理計算手法である多配置時間依存ハートリーフォック法を用いた。この方法では、全電子波動関数を、与えられた数の軌道に電子を詰める全ての可能な電子配置の重ねあわせとして記述する。重ねあわせの展開係数に加えて軌道も時間発展させることで、励起やイオン化を効率的に追跡できる。また、軌道の数を通して電子相関を考慮する度合いを調整し、計算精度を系統的に制御することができる。得られた高調波スペクトルには、通常予想されるカットオフより高次まで延びたプラトーと、プラトーよりも明らかに強度の強い共鳴ピークが見られた。これらの顕著な特徴は、トンネルイオン化で生成した正イオンの応答が、アト秒科学のキープロセスであるレーザー誘起電子再衝突によって劇的に増大されることによることを明らかにした。この結果は、高次高調波分光が、高強度レーザーパルス中における動的電子相関を探索する有効な方法であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
10を超える電子を含む原子の高強度レーザーパルス中での応答を、電子相関まで含めて数値的に厳密にシミュレーションしたのは世界初の驚異的な成果であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
高強度超短パルスレーザー場における興味深い分子ダイナミクスの一例として、中国・華東師範大学のJian Wuのグループが、解離性フラストレーテッド二重イオン化を報告している。これは、例えば水素分子の場合、トンネルイオン化で一度は放出された電子が、解離して離れていく陽子の一方に再び捕獲される過程である。この過程を第一原理シミュレーションする。
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