2018 Fiscal Year Annual Research Report
Visible Light Mediated Cyclodehydrogenation of Arenes
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18F18033
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊丹 健一郎 名古屋大学, 理学研究科(WPI), 教授 (80311728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LI YUANMING 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | フェナントレン / フェナントレン誘導体 / ひずんだ分子 / ホスフィン配位子 / ルイス酸触媒反応 / アルキン |
Outline of Annual Research Achievements |
フェナントレン骨格は有機エレクトロニクスから創薬科学まで広く用いられる構造モチーフであり、これまでに数多くの官能基化手法が改札されてきた。しかし、4位ならびに5位に置換基を有するフェナントレン誘導体は立体的にひずんだ構造を有しており、その合成法は非常に限られていた。例えば4,5-ジフェニルフェナントレンの合成法は4または5段階を有し、低収率でしか目的物が得られないことが知られている。そこで我々は、新たな4,5-ジアリールフェナントレンの合成手法の開発を行った。B(C6F5)3を触媒として用いることで、1,4-ベンゼンジアセトアルデヒドおよび2当量のアリールアルキンの縮合により4,5-ジアリールフェナントレンを得ることに成功した。本反応は温和な条件下、優れた位置選択性で進行する。基質適用範囲も広く、電子供与基および電子求引基いずれの置換基をもつアリールアルキンを用いても反応は進行する。また、内部アルキンでも反応は良好な収率で進行し、さらに複雑な置換様式のフェナントレン誘導体を与える。 さらに我々は、HPLCを用いた4,5-ジアリールフェナントレンの光学分割にも成功した。オルト位もしくはメタ位に置換基を有する誘導体において、高い立体安定性を示すことがわかった。実験的にそのラセミ化障壁を求めることで、4,5-ジアリールフェナントレンの立体安定性をその置換基により高められることがわかった。 多置換フェナントレンは、有機材料のビルディングブロックとして有用であるのみならず、配位子としても利用価値が高いと考えられる。そこで我々は、開発した反応を用いて新規キラルジホスフィン配位子を合成した。さらに、その配位子を[PdCl2(CH3CN)2]と反応させ、二核パラジウム錯体を高収率で得ることに成功し、X戦結晶構造解析によりそのユニークな構造を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では可視光を用いたアレーン類の新規縮環反応の開発を行なっていたが、その開発途上において、非常にシンプルかつ有用性の高い新規反応を発見した。それが研究概要にある「ルイス酸触媒を用いた1,4-ベンゼンジアセトアルデヒドおよびアリールアルキンの縮合反応」である。得られる4,5-ジアリールフェナントレンは、ひずんだ構造をもつユニークな多環芳香族炭化水素であり他の手法では合成困難であることから、本研究課題とは異なるものの、その合成方法論の確立および応用展開に着手することとした。本反応は非常に汎用性が高く、様々な官能基を有するアリール基をもつ基質に対して良好な収率で目的生成物を与える。位置選択性も高く、得られる4,5-ジアリールフェナントレンは幅広く応用が可能な分子であるといえる。また、ホスフィン配位子や新規大環状化合物のビルディングブロックとしても有用であることがわかっており、今後、様々な合成化学者が本反応を用いて分子合成を行い、科学の発展に寄与することが期待される。これらのことから、本研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに開発した反応を用いて、4,5-ジアリールフェナントレンを部分構造にもつ新規環状分子の合成に取り組む。4,5-ジアリールフェナントレンのひずんだ構造を利用して、ユニークな環状分子を合成することができると考えている。出発物質となる1,4-ベンゼンジアセトアルデヒドもしくはアリールアルキンにアミンなどのヘテロ官能基を導入しておくことで、ヘテロ原子含有の環状分子を新たに創製する。また、それらの光物性や酸化還元特性などの性質を調査し、デバイス作製へと応用する。また、合成した新規環状分子の官能基化ならびにパイ共役骨格拡張反応を行うことで、ヘリセン骨格をもつねじれたサーキュレン分子を合成することができると考えられるため、その合成に取り組む。また、開発した4,5-ジアリールフェナントレン合成法を用いることで、様々なねじれ構造を有する多環芳香族炭化水素(PAH)を合成することができると考えている。はじめにねじれたトリフェニレンおよびねじれたペリレンの合成を行う予定である。得られた新規PAHについては、デバイス作製等の応用展開を見据え詳細な性質評価を行う。
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Research Products
(4 results)