2018 Fiscal Year Annual Research Report
銅を凌駕する電気特性を有する軽量CNT銅複合材配線の開発
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18F18050
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
畠 賢治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究センター長 (70282340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MEENAKSHI SUNDARAM RAJYASHREE 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノチューブ実用化研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 銅 / 複合材 / 導電率 / 温度依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Cu並みの高導電性を有するCNT-Cu複合ワイヤーの実現に向けて、CNT-Cuの電子物性を決定する構造因子(CNT長さ・層数・結晶性、CNT/Cu界面構造・分布)を特定し、複合材中での電子輸送メカニズムを明らかにすることで、高性能化に向けた指針の提案を目的としている。 平成30年度は、CNTの構造因子(結晶性・長さ・層数・直径)とCNT-Cu複合材の電子物性との相関を系統時に調べるため、上記構造の異なるCNTを原料としたCNT-Cu複合材の作製と、CNTならびにCNT-Cu複合材の構造解析に取り組んだ。原料としては、合成法の異なる数種類のCNT構造体(市販品ならびに受入研究機関で開発したCNTファイバーやマイクロピラー)を用い、重量解析、電子顕微鏡、ラマン分光法を用いて構造因子を特定した。またCNT中にCuを高濃度で均一に充填するために、受入研究者らが開発した2段階電気めっき法を用いた複合化を行い、断面SEM観察とX線分析によりCuの析出形態を明らかにした。更にCNT-Cu複合材の電子輸送メカニズムを明らかにするため、導電率とその温度依存性を測定した。その結果、CNTとCuが均一分布するように複合化することで、導電率を維持したまま温度上昇に伴う導電率の低下を抑制できることが明らかになった。Cuのような金属材料は格子散乱により導電率が温度上昇に伴い低下するのに対して、半導体やCNT同士の接点を含むCNT構造体は、温度上昇に伴い導電率が上昇する。すなわち本研究で得られた結果は、CNTとCu間でキャリアの交換が生じており、CNTとCuの両方が、複合材の電子輸送に寄与していることを示すものである。更に、複合材が高温においてCuよりも優れた導電率を示す可能性も示唆しており、CNT-Cu複合材の電子輸送メカニズムを理解するために重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、品質の異なる複数のCNT種について、構造解析により結晶性、直径、層数、不純物量の違いを明らかにするとともに、2段階めっき法を用いて複合化し、CNT品質、Cuの析出形態が複合材の電子輸送メカニズムに及ぼす影響を系統的に評価するためのサンプル作製を行った。従来の計画通りに、CNTの構造評価ならびにCuとの複合化が進捗しており、平成31年度に実施予定のCuやCNT/Cu界面の構造評価ならびに電気特性評価に向けてサンプルの準備が整った。 また当初の予定に加えて、めっきのプロセス条件を制御することでCuとCNTの析出形態を意図的に制御し、室温の導電率ならびに温度依存性との比較から、CuとCNTの両方が導電性に寄与していること、ならびに界面でキャリアの交換がある可能性を実験的に示すことに成功した。室温でのCNTの導電率はCuよりも2ケタ以上低い値を示すことから、CNT-Cu複合材中で、CNTも電子輸送に寄与していることは重要な知見である。この結果については、2019 MRS Fall Meetingを始めとする国際会議での口頭発表(4件)を行うとともに、CNT-Cu複合材の先行論文を網羅的に紹介するレビュー論文の執筆を行うなど、成果の外部発信を積極的に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、初年度に作製したCNT-Cu複合材について、CuならびにCNT/Cuの構造解析と電気特性の評価を行う。電気特性については、CNT品質の異なる複数のサンプルについて、前年度よりも幅広い温度範囲での温度依存性評価ならびにバイアス依存評価を実施する。温度範囲については、特に室温以下の低温域(~-250℃)での測定も行う予定である。特に結晶性が異なるサンプル間での界面抵抗やCNT中での散乱効果の違いや、直径やカイラリティの違いによるCNT自身の電子物性が、複合材の電子輸送に与える影響を検証することが狙いである。また構造解析については、CuならびにCNT/Cu界面構造についても詳細を明らかにすることを目的とし、Cu粒径・結晶性、CNT/Cu界面構造、細孔率の解析を実施する。構造評価には、X線回折法・電子顕微鏡解析(Cu粒径・結晶性、CNT/Cu界面構造)、ラマン分光法(CNT結晶性)、ガス吸着法(細孔率)等を用いる。構造解析、低温での電気特性評価ともに受入研究機関で実施可能である。得られた成果は、論文発表ならびに学会発表により、外部普及する。
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Research Products
(6 results)