2018 Fiscal Year Annual Research Report
次元性を超えたナノカーボン材料の制御合成と応用研究
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18F18055
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吾郷 浩樹 九州大学, グローバルイノベーションセンター, 教授 (10356355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DAS RASEL 九州大学, グローバルイノベーションセンター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-07-25 – 2020-03-31
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Keywords | グラフェン / 六方晶窒化ホウ素 / 水浄化 / ろ過 / 分離膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の地球温暖化に起因して世界的に水不足の懸念が強まっており、海水の浄化(脱塩)や様々な汚染水の処理が非常に重要な課題になりつつある。グラフェンをはじめとする二次元材料は表面積が極めて大きく、かつ様々な化学修飾が可能であることから、本分野への応用が期待されている。これまでの研究から、酸化グラフェンや二硫化モリブデンなどの二次元材料からなる膜が、水の浄化に有望であることが報告されているが、分離膜の微細構造等の制御が困難で、十分な分離特性が得られていなかった。そこで、本研究では、分離膜を専門とする外国人特別研究員と、二次元材料を専門とする研究代表者との緊密な共同研究を通じて、二次元材料をベースにしたナノスケールで規則性をもった分離膜を創出し、水の浄化を中心とする環境分野に応用していくことを目的として研究を行っている。 初年度である平成30年度は、二次元物質の粉末の液中剥離と、それによって得られる剥離片の構造を中心に検討した。一般的な酸化グラフェンの膜は水により膨潤してしまうことから、異なる二次元材料をターゲットとした。一連の実験を進めるため、超音波分散装置、遠心分離器、そしてろ過処理を行うための実験装置の準備から始めた。様々な検討の結果、有機溶媒中での超音波処理などによって二次元材料の剥離片からなる分散液を作製し、剥離片の厚さやサイズなどを原子間力顕微鏡(AFM)と光学顕微鏡、ラマン分光測定により詳細に調べた。そして、ターゲットとする二次元材料を効率的に分散し、薄膜とする技術を構築できた。現在は、ビスフェノールAなどの微量の汚染分子や色素などを用い、ろ過効率(水の流速と分離能)について研究を進めており、効果的な水の浄化のための分離膜へと発展することを期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海水の浄化や汚染水の処理などの膜分離については、特別研究員が専門としており、研究代表者の研究室にはこのような実験を行うのに設備が十分になかった。そこで、前年度は装置の準備から始めた。一方、二次元材料に関しては研究代表者の研究室で十分な知見と測定装置があることから、研究代表者と特別研究員が密接に協力して、二次元材料の分散と構造解析について研究を進めることができた。分散条件、溶媒、添加剤等の因子を系統的に変化させ、AFM、光学顕微鏡、走査型顕微鏡(SEM)、ラマン分光などを活用することで、十分に薄く剥離された二次元材料からなる分散液を作製することができた。そしてこの分散液をろ過することによって、二次元材料がラメラ状に積層した理想的な構造の膜を作製するに至った。 現在は、この膜を用いて、種々の分子の分離能を、分子のサイズ、官能基などの点から評価を進めている。当初は十分な設備や経験がなかったことを踏まえると、順調に研究が推移しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に系統的な検討を通じて、二次元材料からなるラメラ状の分離膜を得ることができた。本年度は、微量の色素や汚染分子を溶解させた水溶液を用い、分離膜としての効率(分離効率と水の流速)を調べることで、分離能と処理速度のバランスが取れた二次元材料ベースの分離膜の実現を目指す。また、二次元材料が種々の分子の分離にどのように寄与しているのか、という点について、化学的相互作用とナノ空間との関係から基礎的な理解も深めていく計画である。 さらには、分離効率を一段と高めるため、二次元材料の化学修飾に関する研究も行う予定である。この場合、化学修飾の方法の開発とともに、その解析法についても検討が必要と考えている。そして、様々な官能基の導入の可能性とその効果について、形状効果、化学効果の二点から科学的に解析し、理解を進めていく。 上記の研究の後には、他の低次元材料とのハイブリッド膜など、次元性を超えた高度なナノ構造を有する分離膜や環境センサーとしての展開も視野に入れている。今年度中に上記の水の分離・精製に関する成果をまとめ、論文発表や学会発表を行いたいと考えている。
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Research Products
(5 results)