2018 Fiscal Year Annual Research Report
Control of coherent phonon transport by low dimensional materials
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18F18058
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩見 淳一郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40451786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HU SHIQIAN 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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Keywords | 2次元材料 / コヒーレントフォノン輸送 / 分子シミュレーション / セルロース |
Outline of Annual Research Achievements |
分子鎖、ナノチューブ、2次元材料、ナノファイバーなどの低次元材料においてはフォノン波の特性長が長くなるため、原子レベルの欠陥の導入や、異なる単原子層を積み重ねるなどして、フォノン波の特性長以下のスケールでの「綺麗な」構造化が可能である。これを念頭に、初年度の半年は、室温でコヒーレント・フォノン輸送の制御ができそうな材料・構造系を選定してそのポテンシャルを見極めることに費やした。具体的には、セルロース鎖やセルロースナノファイバー(セルロース鎖の束)および、グラフェンや二硫化モリブデンなどの2次元構造を積層した構造を対象としてフォノン輸送を解析した。また、ポーラス C2Nなどの新材料の計算も行った。解析は、主に分子動力学法や原子グリーン関数法を用いたシミュレーションによって行った。10nm~100nmスケールのセルロース鎖の熱伝導率の長さ依存性を計算したところ、熱伝導率が長さ対して増大することがわかった。一方で、ポリエチレンなどの直鎖ポリマーで見られた熱伝導率の異常的長さ依存性については確認できず、この点については来年度も引き続き解析を続ける。セルロースナノファイバーについては、実験での計測結果も出てきていることから、そこで考慮するべき階層的な構造や、湿度(表面や内部への水の吸着)などの影響についても計算を行った。その結果、セルロース鎖間に水が吸着することでセルロースナノファイバーの熱伝導率が低下する機構が明らかになり、実験での測定結果を理解するのに役立った。2次元構造の積層構造については、異なる2次元構造を積層することにより大きな熱伝導率を大きく制御できる可能性を示した。積層方向への熱伝導は層間の結合が弱いために低いが、フォノンの寿命や平均自由行程は長いために、フォノン波の干渉や共鳴が関係している可能性があると考えて、その詳細の検証を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セルロース、グラフェン、二硫化モリブデン、C2Nなど様々な材料のモデル構築および熱輸送計算を行い、当該年度の目的であった、コヒーレント・フォノン輸送の制御ができそうな材料・構造系の選定が順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度はランダム構造にも着目して研究を進める。低次元材料の場合、内部に散乱体をランダムに配置することでアンダーセン局在が生じ、フォノンの輸送を大幅に低減できる可能性がある。空孔、不純物、内部界面などを散乱体とすることを考えると、周期構造よりも圧倒的に作製しやすい点において、実験での実現可能性に優れる。フォノン波の局在とフォノン粒子の散乱の両方を取り扱えるモデルを開発し、前年度で取り扱った、セルロース鎖やセルロースナノファイバー、グラフェンや二硫化モリブデ ンなどの2次元構造を積層した構造、擬一次元ダイヤモンドスレッドやポーラス およびC2Nなどの低次元材料およびナノ構造に適用する。具体的な手順としては、フォノンのエネルギースペクトル分布を格子動力学と分子動力学により計算し、フォノン透過関数と分子動力学と原子グリーン関数法により計算することで、局在・非局在状態と輸送物性を関連づけてそのメカニズムを解明する。メカニズムの理解がある程度進んだところで、それに基づいて熱伝導率を最小にする構造を最適化手法も交えて同定し、制御性を示す。最適化手法としては、申請者らが開発した、ベイズ最適化と熱輸送計算(原子グリーン関数法や分子動力学など)を組み合わせた手法を適用する。具体的には、ナノ構造内のそれぞれの原子の組成そのものを記述子とすることで、多くの候補構造の中から最適な構造を同定する。最初に数十個の候補をランダムに選択して熱伝導度を計算し、その結果をもとにベイズ最適化により良い性能が見込める数十個の候補を決定してそれらの熱伝導度を計算する。これを繰り返してデータを数十個ずつ増やしていく。その結果、全候補数の数パーセントの数の構造を計算するだけで最適構造を同定できる。
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Research Products
(1 results)