2018 Fiscal Year Annual Research Report
マイトファジーレセプターAtg32のリン酸化制御機構の解明
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18F18075
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
神吉 智丈 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50398088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
AKTER MST 新潟大学, 医歯学系, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / オートファジー / マイトファジー / Atg32 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)は、オートファジーがミトコンドリアを選択的に分解する現象であり、ミトコンドリア恒常性維持に関わっている。ミトコンドリア外膜タンパク質Atg32がCasein Kinase 2(CK2)によりリン酸化されると、そのリン酸化が目印となりミトコンドリアが分解される。CK2は恒常的に活性のあるキナーゼであるが、Atg32のリン酸化はマイトファジー非誘導時には見られないため、Atg32リン酸化を制御するメカニズムが存在すると考えられる。我々の研究室では、以下の2つの方法で、Atg32のリン酸化制御機構の解明に取り組んできた。1.Atg32と直接結合する因子のプロテオミクス解析。2.Atg32のリン酸化を制御する因子の網羅的スクリーニング。これまでの研究で、後者の研究において、Protein PhosphataseであるPpg1がAtg32のリン酸化を抑制していることを発見した。本研究課題では、さらにProtein Phosphataseを制御することでマイトファジーを負に制御する機構の解明を試みている。Ppg1は、Farタンパク質複合体と結合することを既に明らかにしており、これらに対する抗体の作成を行った。具体的には、Far3、Far7、Far10、Far11の全長、もしくは一部を大腸菌に発現させ、リコンビナントタンパク質を精製した。これらをウサギもしくはモルモットに接種しており、抗Farタンパク質抗血清を得ている。 また、Ppg1にタグを付けて発現させ、免疫沈降後に、共沈降されたタンパク質のプロテオミクス解析も行った。Farタンパク質以外にも、幾つか共沈降したタンパク質を同定することができた。これらのタンパク質の破壊株を作成し、Atg32のリン酸化状態を確認中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、Atg32と直接結合する因子のプロテオミクス解析および、Atg32のリン酸化状態を指標として網羅的なスクリーニングを行ってきた。その結果、Protein PhosphataseであるPpg1がAtg32のリン酸化に影響を与えていることが明らかとなった。さらに、Ppg1にはFarタンパク質複合体が結合しており、Farタンパク質もAtg32のリン酸化状態に大きく影響することから、Farタンパク質複合体に関して詳細な研究を開始した。これまでに、Far3、Far7、Far10、Far11の全長、もしくは一部をクローニングし、Hisタグを付けた物を大腸菌に発現させ、リコンビナントタンパク質を精製した。これらのリコンビナントタンパク質を抗原として抗体作成(外注)を行った。得られた抗血清は、一部はそのままでウエスタンブロッティングに利用可能なものであったが、多くは、Affinity精製が必要と思われた。 次に、Ppg1結合するFarタンパク質複合体以外のタンパク質の同定を試みた。Ppg1にFLAG等のタグを付けた状態で出芽酵母に過剰発現する株を作成し、この酵母株を細胞破砕液から抗FLAG抗体レジン等を用いて、Ppg1を免疫沈降した。Ppg1と共免疫沈降されたタンパク質を、LC-MS/MSを用いて解析し、複数のタンパク質を同定した。同定したタンパク質をコードする遺伝子の破壊株を用いてAtg32のリン酸化状態の確認を行っている。この方法では現在までに、Atg32のリン酸化状態に大きな影響を与える因子は同定できていないが、まだ未解析な因子が複数残っているため、これらから重要な因子が同定できると期待している。 このように、Farタンパク質複合体の解析については、研究が大きく進んでおり、全体として概ね順調と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、Far複合体形成とその複合体とPpg1との結合がAtg32脱リン酸化にどのように影響するかを詳細に解析することを進めていく。具体的には、Far複合体は、Far3、Far7、Far8、Far10、Far11と複数のタンパク質からなる複合体であり、どのタンパク質同士が直接結合することで複合体を形成しており、それぞれのタンパク質がPpg1の機能を発揮するためにどのような役割を持つかを検討する。現在作成中のFarタンパク質の抗体作成・精製を完了し(Far8抗体は既に保有している)、どのFar因子同士が相互に結合しているかを、作成した抗体を用いた免疫沈降により解明する。また、こうしたFar因子同士の結合が失われることで、Atg32のリン酸化状態に影響を及ぼすかを検討する。さらに、個々のFar因子の破壊株を作成し、Ppg1とFar複合体との相互作用に直接影響を及ぼすFar因子を決定することにより、Ppg1-Far複合体の形成過程およびその意義を明らかにする。次に、マイトファジーを誘導するための条件である飢餓状態と、マイトファジーが誘導されない増殖期において、Far複合体の形成やPpg1-Far複合体の形成に変化か有るかどうか、そうした変化がマイトファジー制御に関わっているかどうかを検討する。このような研究により、Ppg1およびFar複合体によるAtg32脱リン酸化制御機構を明らかにする。 また、これまでのプロテオミクス解析によりPpg1と結合すると考えられた因子の中で未解析の因子について研究を進め、Atg32のリン酸化状態に影響を及ぼす新規Ppg1結合因子の同定を進めていく。
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Research Products
(2 results)