2018 Fiscal Year Annual Research Report
Area-specific gene delivery on apatite-coated 3D scaffold for vascularized muscle tissue engineering
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18F18106
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大矢根 綾子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (50356672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SANTHAKUMAR SYAMA 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-10-12 – 2021-03-31
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Keywords | 足場材 / 歯周組織再生 / りん酸カルシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
再生医療における三大要素は、「細胞」、「分化誘導因子」、「足場材(スキャホールド)」とされている。本研究では、生体外で後者の2要素を複合化することで、血管を含む筋肉・骨などの組織の再生に有効な、in vivo組織再生用足場材の創製を目指している。 平成30年度は、目的とする足場材創製のため、分化誘導因子を失活させることなく足場材と複合化するための手法について検討した。具体的には、リン酸カルシウム過飽和溶液法を用い、足場材に分化誘導因子とリン酸カルシウムを担持・複合化するための反応システムの構築ならびに条件検討を行った。足場材としては、3次元連通多孔質構造を有する生分解性コラーゲンゲルを用い、分化誘導因子としては線維芽細胞増殖因子-2(bFGF)を用いた。 まず、3次元足場材の連通多孔性を保ったまま表面全体にbFGFとリン酸カルシウムを担持・複合化するため、連通孔内部にまで反応液を浸透・拡散させるための減圧吸引器および振盪器を利用した反応システムを構築した。次に、構築した反応システムを用い、リン酸カルシウム過飽和溶液の条件(イオン濃度、温度など)について検討した。反応後の足場材の内部および外部表面を走査電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分光分析装置などを用いて評価したところ、適切な条件下において、足場材の表面全体に渡ってリン酸カルシウムナノ粒子が析出することが分かった。また、反応後の足場材を無血清培養液に浸漬し、培養液中のbFGF濃度をELISAで測定した結果、同足場材からbFGFが放出されることが確認された。この結果は、反応後の足場材にbFGFが担持・複合化されたことを示している。以上の結果から、本法が、bFGFとリン酸カルシウムを担持・複合化した3次元足場材の作製に有効と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、反応後の足場材の表面構造にばらつき・不均一性が認められたものの、連通多孔内に反応液を浸透・拡散させるための減圧吸引器および振盪器を導入することで解決できた。構築した反応システムを用い、リン酸カルシウム過飽和溶液の条件(イオン濃度、温度など)を調節した結果、bFGFの失活を招きにくい反応条件下(室温以下、中性付近)で、bFGFとリン酸カルシウムを担持・複合化した3次元足場材の作製に成功した。以上より、おおむね期待通りの成果が得られていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に構築した反応システムを用い、bFGFとリン酸カルシウムを担持・複合化した3次元足場材を作製し、物性評価および組織再生用足場材としての機能評価を進めていく。 まず、前年度最適化したリン酸カルシウム過飽和溶液条件を基本とし、bFGF添加濃度を調節することで、足場材へのbFGF担持量を制御する。得られた足場材について、昨年度実施した走査電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分光分析装置などによる基礎的な構造・組成評価に加え、フーリエ変換赤外全反射分光分析装置、透過電子顕微鏡、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置などを用い、より詳細な構造・組成評価を行う。また、足場材を無血清培養液に浸漬し、培養液中のbFGF濃度をELISAで測定することにより、足場材からのbFGF徐放挙動を調べる。 以上の評価結果から選定される足場材について、in vitroおよびin vivo機能評価を進める。比較対象としては、未処理の足場材、ならびにリン酸カルシウムのみを担持・複合化した足場材(bFGF非担持)を用いる。in vitro機能評価においては、MC3T3-E1などの株化細胞を用いた細胞培養実験を行い、足場材表面における細胞の接着性・増殖性、細胞毒性、ならびに分化誘導能などを評価する。続いて、in vitro機能評価の結果から選定される足場材を用いてin vivo評価を実施する。in vivo評価においては、足場材をラット頭蓋骨欠損モデルに埋入し、生体内における足場材の生分解挙動ならびに組織再生能を評価する。得られたin vitro・in vivo機能評価の結果を反応条件にフィードバックし、足場材の改良・最適化を進めていく。
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