2019 Fiscal Year Annual Research Report
海溝型巨弾地震による高精度地震動予測と地震早期警報に関する研究
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18F18108
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩田 知孝 京都大学, 防災研究所, 教授 (80211762)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
VIENS LOIC 京都大学, 防災研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-10-12 – 2021-03-31
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Keywords | 南海地震 / 長周期地震動 / 観測点間グリーン関数 / 地震波干渉法 |
Outline of Annual Research Achievements |
将来発生する南海トラフの地震の長周期地震動評価の高度化を目的として,観測点間グリーン関数を構築するため,海底地震計DONETと本州紀伊半島の地震計Hi-netの記録に地震波干渉法を適用した.相互相関関数はゼロ時刻を基準として対称となることが理想的であるが,実際は対称にはなっていない.地震波干渉法においては,信号の震動源が2観測点に対して周辺に均一に分布していることが対称性には必要である一方,本研究で狙いとしている周期数秒程度の震動源は,波浪起源であると考えられるため,陸と海域の観測点ペアに対しては震動源の分布は均一でないことに加えて時空間的に変動しているためと考えられた.それは,1年間のデータを1ヶ月毎に分けて確認したところ,季節によってその非対称性が強い場合とそれほどでもない場合が見られたという分析結果による.そこで,この個々の期間の相互相関関数に対して主成分分析を行い,いくつかの特徴をもったグループに分けるとともに,より似通った相関関数をスタックに使うことを深層学習の方法を適用することで分離して観測点間グリーン関数を得る方法を提案した.これにより,従来の一様スタック法に比して,真に近い観測点間グリーン関数を得ることができるようになった.この方法の有用性は,得られた観測点間グリーン関数によって,2016年4月1日に海底地震計観測網直下で起きた熊野灘の地震の本州紀伊半島の観測点記録の再現によって示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では一貫して,将来発生する南海トラフの地震の長周期地震動評価の高度化と,実際発生した場合に伝播してくる長周期地震動の早期検知に向けた基礎的な研究進めることを目的として,信頼度の高い観測点間グリーン関数の構築に関する研究を行っている.地震波干渉法はある期間の2観測点記録の相互相関を得てそれらをスタックすることにより,観測点間グリーン関数を求めるが,震動源が時空間に変化することを考慮して,期間は1年間といったものと取る場合が多い.一方,本研究の目的を達成するためには,海域と陸上の観測点の記録の相関が必要であるが,従来の方法では1年間のスタッキングでも良好なグリーン関数がうまく求められなかった.ここでは,各相互相関関数の類似度を評価した上で,深層学習の手法を適用して,似通った相互相関関数を選び出してスタッキングするという方法を提案し,その有用性を確認した.現在この報告を論文としてまとめ,欧文雑誌に投稿した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度はこれまでに検証してきた観測点グリーン関数に加え,大都市が位置する大規模堆積平野内の地震観測点と海底地震観測点に地震波干渉法を適用して観測点間グリーン関数の推定を試みる.堆積平野内の観測点の脈動の起因は更に複雑な可能性があり,コヒレントな情報を取り出すことができるかどうかはチャレンジングな内容ではあるが,前年度に構築した類似度を推定する方法の適用することで可能性があると考えている.得られた観測点間グリーン関数により,想定地震に基づく南海トラフの巨大地震の長周期地震動の予測手法の高度化を図る.
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